感性について
Published by 松原幸行,
感性について久しぶりに考えた.
次は,過去の感性SIGで私が「感性的な解釈」として提示したエッセイである.
<ここから>
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ここに,花子さんと真一くんと太郎くんがいます.真一くんは花子さんを愛していて,何とか恋人にしたいと思っています.花子さんも真一くんに好感を持っているようです.ある日真一くんは一念発起し,花子さんに愛を告白することにしました.生花店で「綺麗な赤いバラ」を買い,包んでもらいました.真一くんと太郎くんは友達同士です.太郎くんは真一くんが買った「赤い花」を見て,高かっただろうなぁ,と思いました.花子さんは赤いバラを見て「自分への真一くんの愛」を知り,幸福に思いました.
ここに見られる,太郎くんと花子さんの受け止め方が,感性的であるか,そうでないかの差であると考える.
- 太郎くんの見ているものは単なる「赤い花」である.
- 真一くんの見ているものは「美しく赤い×パラフィン紙とリボンでラップされたバラ科の花」である.
- 真一くんは,バラの花を見て美しさを感じるという「感覚的な解釈」をしている.美しさを感じることはほとんど直感に近いが,このバラに自分の愛を込めて、花子さんに伝えたいという感情が惹起されている.
- 花子さんの見ているのは,「真一くんの愛がこもった素敵な贈り物としてのバラ」である.花子さんにとってはこのバラは単なる美しい赤いバラではなく,好感を持っている真一くんの想い=愛という意味を伴ったかけがえのないものである.
上記の様な関係があるがゆえに花子さんは感動し,幸福を感じるのである.このようなものが感性的な解釈だと考える.整理すると次の様になる.
- 花子さんにとってのバラ=真一くんの愛(感性的な解釈)
- 真一くんにとってのバラ=(花子さんへ送る)美しいバラ(感覚的な解釈)
- 太郎くんにとってのバラ=(単なる)赤いバラ(知覚的な解釈)
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<エッセイはここまで>
ここで示した解釈の違いは,モードの研究に見られるコノテーション(共示、内包している意味)とデノテーション(外示、直接的な意味)の関係で整理できる(1).同じ「バラ」であっても受け止め方でその意味が異なる訳だが,花子さんはより高次の意味解釈をしており,「真一くんの愛」という特別な意味を内包したものとなっている.より感性的な解釈であると言える.これに対して太郎くんの解釈には,直接知覚した意味のみである.真一くんの解釈は太郎くんには無い特別の意味解釈をしているが,「美しい」という直感的(感覚的)なものに留まっている.
一つの仮説としては,「感性的な解釈」や「感覚的な解釈」があるというとは,「感性」と「感覚」は異なるということになる,
なお,感性工学会の中でも感性と感覚の捉え方がまちまちであり,収束しているとは言えない状態である.今後の研究に期待したい.
"hanajikan_magazine"のインスタグラムより引用(https://www.instagram.com/p/Bbys1ZbFFji/?hl=ja&taken-by=hanajikan_magazine)
参考情報:
(1) モードの体系 http://overkast.jp/2012/06/mode2/