企業の中でこそのイノベーター

 HCD-Netフォーラム2016の基調講演で i-School の田村 大 氏は「シリアル・イノベーター」という概念を提唱していました。イリノイ大学工学部で生まれた概念です(1)。大企業の中で、自分の専門性に関わりなく連続的に(シリアルに)イノベーションを起こせる人のことを指すようです(2)。シリコンバレー型ビジネスへの失望感があるとも言います。知的財産はイノベーションの宝庫であるという考えの下、あえて企業の中で多くの部門を橋渡しし、問題解決できる人をシリアル・イノベーターと呼ぶそうです。要約すると「重要な課題を解決するアイデアを思い付き、その実現に欠かせない新技術を開発し(もしくは結びつけ)、企業内の煩雑な手続きを突破し、画期的な製品やサービスとして市場に送り出す人」だそうです。部門でできるのは技術開発チームを設置するとか新規事業の企画を練るメンバーをアサインするというところまでで、実際には異なる部門の彼らを結び付けなければ実らない、ということです。ロールモデルにはP&Gの例がよく登場します。キヤノンは、イノベーションの潜在力はあるけど、シリアル・イノベーターがあまりいないのかもしれません。田村氏は、社歴の浅い7年目位までの若手の中で稀有な人材を見つけ、経験させるのがいいと言います。アラサーが期待の星です。「シリアル・イノベーター」について詳しくは書籍をどうぞ(3)。

 ところで、一つ前のコラムでも述べましたが、このような活動(ネゴシエイション)で必要なのが専門知識とか能力ではなくて、連携力や感性です。専門知識を養うよりも、連携力や感性を養った方が効果的かもしれません。戦略的なアプローチです。


(画像出典:Creative Commons at Flickr:http://u0u1.net/FByC)
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参考:
(1) ブレイクスルーイノベーションの流儀 http://bizzine.jp/article/detail/765
(2) 複数のイノベーションを連続的に起こす「シリアル・イノベーター」とは? http://u0u0.net/us3Y
(3) amazon『シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀』 http://u0u0.net/us5r