アンカリング
Published by 松原幸行,
皆さんはある音楽を聴いた時に、昔聴いたその当時の経験を鮮明に思い出す、ということはありませんか?それはその音楽が昔の経験に紐付けられているからです。アンカリングとは心理学では、初期に不十分な情報で推定したことがそれ以降の考えを後々まで歪めてしまうことを指します(1)(2)。認知バイアスの一種です。たまたま目に付いたキーワードやスローガン、手っ取り早く利用できる数字などが記憶に残り刷り込まれることで、最終的な判断を固定化してしまう。これは先入観の形成にも結びつきます。何か新たな価値基準を認識するまで"一次的な判断基準"として自己の中に存在し続けます。まさにアンカー(錨)の様にひっかかり続けるわけです。この概念を、一瞬で自分を最高の状態にできるテクニックとして、ポジティブに用いる向きもあります(3)。試合などで最高のパフォーマンスを出した経験を思い出させそのときのメンタリティーを再現する、というものです。イチローやラグビーの五郎丸選手のルーティンがまさにその再現中であると言えます。
マーケティングでは、店頭のPOP広告などで、消費者にこのアンカリング効果を促す試みがあります(4)。特売価格を元の価格と並べて表記したり「期間限定」とか「タイムセール」などがそれにあたります。ただこれもやり過ぎると購買を煽るだけと受け留められ逆効果です。気の利いた方法というものは何にしてもあるものです。
ユーザー経験を考えた場合、それが新しい経験であればあるほど、アンカリングが効果的です。経験の導入部や節目のタッチポイントなどで過去の素晴らしい経験の記憶をリマインドするようなものがあれば、その経験を続けるモチベーションにポジティブな影響を与えます。これで成功している一例は、Fotojamのように自動で写真アルバムを作成してくれるものや(Fotojamは全自動ではないが)日経が出している個人宛のメール広告(個人名で動画メールが届く)などかあります。タイミングの問題はありますが良い事例です。サービスも、サービスとサービスが連携することを考えると、アンカリングのうまい組み込みが大事と言えるのではないでしょうか。
(画像出典:By Murray Foubister - https://www.flickr.com/photos/mfoubister/22187929054/, CC BY-SA 2.0, http://bit.ly/2x66oO2, Wikimedia Commons)
参考情報:
(1) アンカリング効果 http://bit.ly/2x6n8ot
(2) アンカリング http://bit.ly/2x6fFWa
(3) イチローもやっている「アンカリング」テクニック http://bit.ly/2x69Qbo
(4) アンカリング効果とは?現場での活用例で学ぼう http://bit.ly/2x5zqx6