データを捨てる活用方法

断捨離という言葉をよく聞く.また自分でも断捨離をしているところでもある[1].意味合いは"不要な物を減らして生活に調和をもたらそうとする考え方"であるという.何が不要かは一人ひとり違うので,断捨離も自分の価値観で行うしかない.その断捨離について「データの活用」と言う観点から考えてみた.データを活用する過程で,不要なものを整理し無駄を排除できるからである.

入手したデータについて「とりあえず保存」という行為が往々にしてある.特に使用目的もないのに,メールや配布資料や,時には下書きまでをも保存する.ブレインストーミングの結果である大判の模造紙を写真に撮り,模造紙と画像の両方がいつまでも残っている.報告書がリバイスされているにも関わらず,全て保存している.あるいは,皆さんのところにも,一年で一度も見ない資料(紙・データ)があるであろう.これでは,"データを効果的に保管している"とは到底言えない.

リズ・ダベンポート(Liz Davenport)氏によると、人は年間180時間を探し物に費やしているそうだ[2].180時間とは,一日8時間で月の稼働日が22日間として,約,正味1ヶ月分を探すことだけに費やしていることになる.たいへん非生産的である.探す時間を減らすだけでも,立派な生産性向上策となる.

一番シンプルな方法は,ファイルフォルダー内に「Old」フォルダーを作成して,修正した後の古い文書は全てここに仮保管し,区切りがついた時に空にする方法だ.これを共有フォルダー内で行えば,データの重複なども防げる.これなど既に多くの人がやっている方法だと思うが...

法律事務所や住宅関連の会社は紙の保管を減らすのは至難の技だが,一般のオフィスであれば,とにかく電子化して紙資料を減らすのは,断捨離の第一歩である.その時に効果的な方法が,エクセルでの管理である.私は,コラムに使用している画像は,画像名とサムネイル,掲載URL,発信者名をエクセルに一元管理している.一応引用表示もしているが,万が一問い合わせがあった時に対処しやすいように管理しているのだが,この方法がデータ管理にも使えるかもしれない.

Yahooニュースのダイジェスト記事は,13文字という社内規定があるらしい.1行で表示でき目に入る文字数が大体それぐらいであるところからきている.これを模して,関連資料は要点を15文字程度の一文にまとめようにしたらどうであろう.エクセル表を用意し,内容が15文字で書いてある.その右に格納フォルダーのリンクがある.作成者や作成年月も書いてある.このエクセルも本体は共有フォルダー内にあり,このエクセルへのリンクがデータを共有する人全員のPCのディスクトップにあれば,データにアクセスする時間も短縮できる.

探す時間を減らすのもそうだが,保管するデータそのものも減らしたい.その指針となるのが,ダイアモンド・オンラインに出ていた.これによると,保管する資料は次の3つで良いそうだ[3].

  1. 契約書・発注書・注文書の類
  2. 言った言わないにつながるような,言質を含んだメールや会議の議事録
  3. 納期・機関・価格・数量など数値に関するもの

これ以外は保管していてもほとんど役には立たないので,先の15文字で要約した後,廃却せよということである."とりあえず保管"をしている人にとって「廃却」という行為は大変勇気がいるが,保管量と検索時間は正比例するので,捨てる勇気も必要である.

米国の文化人類学者のエドワード・T・ホール(Edward Twitchell Hall)氏は,著書『かくれた次元』の中で「ソーシャルスペース」という概念を提示しており,その距離は半径3.5メートルであるとしている.仕事が社会的な営みだとすれば,その仕事に必要なデータ・ツール・サンプルも3.5メートル以内にあることが望ましい.紙資料の保管場所は共有のものであれば軽く3.5メートルを超えるから,できるだけ電子化して,PC経由でいつでも見られるようにすることは意味があるのだ.

ちなみに『かくれた次元』にはハイコンテクスト・ローコンテクストにも言及していてとても良い本なので,是非一読をお勧めする[4].


"ar1su.k"さんのインスタグラムより引用(https://www.instagram.com/p/BjjCPS1Asxg/

参考情報
[1] 自分の場合は終活の一歩,という意味合いもある.用意周到にしたいものである.
[2] 『気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ』(著:Liz Davenport,訳:平石 律子,2002,草思社)> https://www.amazon.co.jp/気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ-リズ・ダベンポート/dp/4794211465
[3] 「「念のため、このデータは残しておこう」病の治し方」> https://diamond.jp/articles/-/179969 「仕事がしづらい「ぐちゃぐちゃな机」をなんとかする方法」> https://www.lifehacker.jp/2012/11/121113book-to-read.html
[4] 『かくれた次元』(著:Edward Twitchell Hall,訳:日高敏隆ら,みすず書房,1970)> https://www.amazon.co.jp/かくれた次元-エドワード・T・ホール/dp/4622004631