シティポップ創成期のあらまし
Published by 松原幸行,
シティポップを語る上で外せないバンドは、なんと言っても「はっぴいえんど(1970〜1973)」である。アルバム『風街ろまん(1971)[1]』の『風をあつめて[2]』という曲はあまりにも有名で教科書にも載っているし、日米映画『ロスト・イン・トランスレーション(2003)』の挿入曲でもある。
はっぴいえんどは、細野晴臣(Ba)、松本隆(Dr)、大滝詠一(Gt)、鈴木茂(Gt)の才能ある4人がアメリカン・ロックのテイストと詩的な日本語を融合させて"日本のロック"を確立したバンドである（と後年に評価される）。でも当時は無名であった。
その4人のチャレンジは路線の違いで長続きせず、アルバム3枚をもってバンドは解散する（1973年）。しかも3枚目の録音をハリウッドで行う前には既に解散状態にあったという。松本は作詞家になることを既に決めていたし、大滝もすでに彼の音楽世界にのめり込んでいた。
解散後に細野と鈴木は松任谷正隆(Ker)と林立夫(Dr)を誘って「キャラメル・ママ(1973〜)」という音楽プロデュース＆ロックバンドを立ち上げる。その後キャラメル・ママは改名して「ティンパン・アレイ(1974〜1970年代後半)」となるが、彼らの才能とシティポップ感あふれるセンスは後述するように多くのミュージシャンに影響を与えるのである。なおキャラメル・ママの世界はアルバム『キャラメル・ママ(1975)[3]』に凝縮されている。
キャラメル・ママの一つの業績に昭和歌謡のリメイクがある。雪村いづみ、いしだあゆみ、アグネス・チャンらの編曲と演奏を担当し彼女らのシティポップ化をバックアップしている。必聴はいしだあゆみの『アワーコネクション(1977)[4]』だ。これは「幻の名盤」と言われているし、キャラメル・ママのクールでファンキーなシティポップ感あふれるものとなっている。
なお、キャラメル・ママの演奏の方の実力は、アルバム『キャラメル・ママ』の『Chopper‘s Boogie[5]』という曲を聴けば良く分かる。卓越したものである。
このアルバムには細野による『Yellow Magic Carnival[6]』という曲がある。これは細野が後に作る「イエロー・マジック・オーケストラ(1978〜1983)」というバンドの出現を示唆するものである。
一方、大滝は、かの「シュガー・ベイブ(1973〜1976)[7]」をプロデュースし山下達郎や大貫妙子[8]を世に送り出す。山下のブレイクは語るまでもないが、大貫も台湾では「シティポップの女神」とあがめられている。
また、シュガー・ベイブのライブを観ていた荒井由実は『ミスリム(1974)』のバックコーラスを山下、大貫と吉田美奈子をに依頼するし、竹内まりやも同じライブ会場にいたそうだ。竹内はその後山下のライブに入り浸ったという。
なお、キャラメル・ママは2枚のアルバムを出して解散した。その後、細野は坂本龍一(Key)や高橋幸宏(Dr)と組んでイエロー・マジック・オーケストラを立ち上げ、松任谷は荒井由実のサウンド作りに専念し公私ともに彼女をバックアップするようになる。ユーミン・サウンドはイコール松任谷正隆であると言っていい。なお細野は「ハイ・ファイ・セット(1974〜1994)[9]」の名付け親でもある。
これらが、1970年代に起こったシティポップ創成期のあらましである。
はっぴいえんどの影響は今に続いている。例えば『風をあつめて』は、和田アキ子や窪田正孝など多くのミュージシャンにカバーされている。また、インディーズのスター、マック・デマルコは細野の『Honey Moon』をカバーし日本語で歌っている[10]。
先日、TVKテレビの『太田和彦のふらり旅 新・居酒屋百選』を観たらテーマ曲が『風をあつめて』であったので、驚きつつニンマリしてしまった（笑）
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参考情報
[4]『アワーコネクション』by いしだあゆみ｜Spotify, Youtube, 『東京ブギウギ』by 雪村いづみ＆キャラメル・ママ｜Youtube, 『ポケットいっぱいの秘密』by アグネス・チャン w/キャラメル・ママ｜Youtube