コトバの難しさ

「言葉」は難しい。

言葉は時代とともに変わるし世代特有の言葉もある。

「若者言葉」などといってティーンエイジャー間で使われる隠語のようなものから、ビジネスシーンで日々よく間違われているものまでたくさんある。本コラムではその中からいくつか紹介する。

1.「○○させていただく」
もともと「させていただく」の意味は、相手の事前承諾なしに何かを(勝手に) 行う(あるいは"行った")時に「○○させていただく(いただいた)」とお詫びもかねて一言いう時のフレーズである。それが今は何にたいしてでも「させていただく」を連ばつする傾向にはうんざりする[1]。

会議でもTVのワイドショーでも、進行役やMCから指名させれているのに「それでは説明させていただきます」などと切り出されるとおかしく感じる。「説明いたします」でいいではないか。

2.「○○と思っていてぇ」
けっこう知的レベルの高い人でも、自分の意見を述べるさいに「○○と思っていてぇ」と語尾を伸ばしている人がいる。ちゃんと公私の区別をつけ、「○○と思っています。そして...」と言ったほうがいいと思う。

3.「○○円からいただきます」
飲食店などで精算する時によく言われる。ものをあげる訳ではなく精算であり、しかも
その途中なので、「○○円お預かりします」と言うのが正しい。

4.「○○でよろしかったですか?」
同じく飲食店で、注文したさいによく言われる。注文は済んでいないのだから「○○でよろしいですか」と言ってほしい[1]。

ビジネスシーンで、間違いではないが正しくないと思われてしまう言葉がある[2]。

5.「発足(ほっそく)」を(はっそく)と読む
昔のように言葉づかいをたしなめる上司が少ないので、「はっそく」と言っている人がかなり多い。正しくは「発起人」の「発」と同じで「ほっそく」てある。

6.「代替(だいたい)」を(だいがえ)と読む
これも同じで、とても不自然に感じる。大学教授や評論家で「だいがえ」と言っているの聞くと、それたけでもう常識を疑ってしまう。

7.「立振舞い」と「立居振舞い」
所作動作や行動について「立振舞い」と言う人がいるが、本来「立振舞い」とは、旅立つ前の食事会のこと、つまり送別会のようなものである。所作動作や行動を示す時は「立居振舞い」という。

8.カタカナ語を連発する
欧米文化を取り入れてきた歴史があるためか、単にカッコいいと思うからか、カタカナ語、つまり英語を英語のまま言う人も多い。「デシジョン(decision)」など既に一般化した言葉もあるが、「エビデンス(証拠)」や「インフルエンサー(影響力のある人)」など、カタカナ語は氾濫しつつある[3]。

このカタカナ語よ使用はコロナ禍でますます進んだ。「ロックタウン」「ステイホーム」「クラスター」「ソーシャルディスタンス」「アウトブレイク」「エピセンター」などなど。

英語に堪能な小池都知事など、「メルクマール(目標、目印)」というドイツ語まで持ち出して説明している。

フリーアナウンサーの久米宏氏は、「○○とは思わない」と「は」をつけると無責任な言い方になる。「○○と思わない」と自分の意見としてしっかり言うへきである、という[4]。「とは」とすると他人の意見を引用して自分はそう思わないという遠回しな言い方となり、確かにやや曖昧だ。

ただここには、日本人的な波風立てず穏便にことを進ませようという姿勢もあるようだ。そうであれぼ一概に悪いとは言えないのではないか。言葉は難しい。

Jon Sullivan - Bodie Typewriter, PDPhoto.org, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29658による

参考情報
[1] おかしな日本語だと思われる!使うと人にモヤモヤされやすい「微妙な言葉遣い」10選 - https://precious.jp/articles/-/9610
[2]【間違えると恥ずかしい!】ややこしい日本語19選 -
https://next.rikunabi.com/journal/20160624_1/
[3] 横文字連発で日本大混乱…コロナと同時に拡大した「新カタカナ語」辞典 - https://president.jp/articles/-/34587
[4] 1億総責任逃れ"とは"、言いません。 - https://knock-knock.tokyo/kume-net/movie/464