輪ゴムについて
Published by 松原幸行,
輪ゴムを発明したのは、イギリスのトーマス・ハンコック(Thomas Hancock、1786-1865、1)という青年で、1820年のことです(2)。当時34歳で馬車職人であったハンコックは、常々、乗客が雨に濡れないようにするための防水布のことを考えていたそうです。ハンコックが、中南米で先住民族が使用していたゴム製の袋に目をつけ、薄く輪切りにすることで靴下や服の袖を止めるのに利用できると考えました。ハンコックは防水布の発明者チャールス・マッキントッシュを相棒に、防水布の商業生産を成功させゴム製品の会社を創設します(3)。当初は紐状のものが主流だったようです。輪っかになった商品の良さを見出せませんでした。
ところで海外ではゴム・リングとかリング・ゴムと言っても通じません。英語ではラバー・バンド(Rubber Band)です。
日本で最初の輪ゴムは、オーバンドで有名な株式会社共和の創業者西島廣蔵が自転車のチューブを細く切り、輪ゴムとして生産したのが始まりとか。(1923年、大正12年) 当時の日本銀行では紙幣を束ねるのに、今の様な帯封ではなく輪ゴムで束ねたそうです。
モノを結束する、まとめる、留める、古来より紐を用いていましたが、ハンコックの発明により、結束の世界に大きな革命(Brake Through)が起きました。ゴム紐はイラスティック(Elastic)と呼ばれ、洋裁などに使用します。これを輪にしたものはイラスティックバンド(Elastic Band)と呼ばれるそうです。今では、輪ゴムは玩具(指鉄砲)でありスポーツ用具(ゴム銃射撃競技大会)です。
余談ですが・・・誰でも知ってるオーバンドのパッケージをデザインしたのは、日本のモダンデザインの父と呼ばれ、デザイナーで画家でもあった今竹七郎です。今竹は、メンソレータム(現在はロート製薬がM&Aで買収しています)のリトルナースやメンターム(一時倒産した近江兄弟社は大鵬薬品の資本参加で再興)のインディアンボーイ、関西電力の社章(アンペアのAとボルトのVを組合わせた形だそうです)、日本酒「白鶴」のパッケージなどをデザインしています。
たかがゴムバンドとバカにしてはいけません。天然ゴムの輪ゴムは現在も作られていますが、最近では合成ゴムで出来たカラフルなカラー輪ゴムも増えてきました。2004年にMoMAで開催された「Humble Masterpieces」で、展覧会のタイトルにふさわしい「ささやかなれど、傑作」に値するアイテムとして、X字型のラバーバンド「X-Shaped Rubber Bands」が取り上げられました。
輪ゴムを2つ使わなくても、これ1つでカードやケースなどを束ねたり、プレゼントを止めるのに便利そうですし、なによりもチャーミングです。
もう一つ、MoMAやスミソニアン博物館でも販売されている、Made in Japanのラバーバンドがあります。
アッシュコンセプトとPasskey Designのコラボで商品化された「Animal Rubber Band」です。
使い捨てなんてモッタイナイ、使わずに壁に止めておきたい、そんな気持ちを起こさせてくれます。
参考情報:
(2) http://taleofpirates.info/ボア・ハンコック.html 残念ながら「輪ゴム」の特許を取って儲けたのはスティーブン・ペリー(Stephen Perry)という人です。
(3) https://www.srij.or.jp/newsite/magazines/mame/mame_pdf/mame38.pdf, https://www.gizmodo.jp/2015/02/post_16486.html