メガネ禁止

メガネ禁止という風変わりな、時代錯誤ともいうべき企業の不文律がインターネット上で話題となっていた。

例えば、百貨店の受付係やショールームスタッフ、宴会場スタッフ、美容クリニックの看護師、などは来訪者への印象を良くしなければいけないということから、「メガネの使用は不可」を指示する企業がある。なんとも理不尽である。

経済同友会 代表幹事の櫻田謙悟氏は"ナンセンス"としながらも、「私はメガネの女性が好きなので」とズレて発言し、逆に炎上してしまう始末である[1]。どうしたことか。

ところが理由はこれだけでは無いという。職場での結婚率を上げる、つまり社内結婚を促すためだという。これは戦前の話ではなく、現代の大企業での話である[2]。

そしてこれは、会社への帰属意識に関する古い捉え方である。つまり、<伴侶を得ることができた ありがたい会社>、という意識の醸成が意図されているような気がする。男性中心という意味でも重ねて時代錯誤である。明らかに間違ったアプローチであり、もっと「エンゲージメント」という考え方があって良い[3]。

世界経済フォーラム(WEF)が各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2018」で日本は149国中の110位。G7の中ではダントツ最下位だ。情けない限りである[4]。

一方、良くある業績評価のパターンとして、女性の登用を促進するという目的の下、めぼしい有望な女性の業績評価に下駄を履かせる、というものがある。これも日本社会を背景とした"妥協の不文律"だ。

純粋に成果主義で評価するのではなく、女性の登用を急ぐという<評価指針のフィルタ>を導入し、評価段階毎の分布率とのせめぎ合いの中で落としどころを探る。これが日本の成果主義の実情である。いわば相対評価だ。欧米のように、業績の良い者をストレートに絶対評価する、とはいかないことがマネージャーの辛いところだ。

なぜ欧米はそうできるのか。それは就労自体が流動的だからである。つまり、絶対評価で業績の悪い人は階級を下げられたり解雇されたりする[5]。そしてできる人を臨時に採用する。このようなことが評価のたびに行われる。だから、評価される方も必死である。しかも4月の新人一斉採用なども無いから、退職、再就職なども当たり前に行われる。

評価に妥協の側面はあるものの、日本的な合議主義で人事バランスを取ろうとすることは、あながち悪いことではないのではないか。ある意味で民主的であるとも言える。

それよりも、尊重されるべき「個の意思」が外面や古い慣習で考慮されないというのは、どう考えても合理的ではないと言わざるを得ない。



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参考情報
[1] 診断書があっても"女性はメガネ禁止"。経済界が「私は好き」と笑っている場合ではない理由 > https://www.businessinsider.jp/post-202449
[2] 働く女性に「メガネ禁止」の謎、ルーツは「社内結婚」促進のためか > https://diamond.jp/articles/-/220484
[3] エンゲージメントの観点では、ビジョンや目標の共有とかEX(Employment eXperience、従業員経験)が大事となる。[4] 【国際】世界「男女平等ランキング2018」、日本は110位でG7ダントツ最下位。北欧諸国が上位 > https://sustainablejapan.jp/2018/12/18/gender-gap-index-2018/36138
[5] ただ、人種差別問題などへの配慮から、評価点が同じ場合は白人よりも有色人種が有利になることはあるようだ。