"Mindset"(Carol S.Dweck)

あなたがもし、今期の仕事の中間成果が「B」だったとしたら、あなたは次の2つのどれを選ぶだろうか。ちなみに「B」は標準値であり[1]、秀でていないが不可でもないというランクである。

  1. 今期もしくじった、自分はダメな人間だ。こんなにがんばったのに報われないのは絶望的。もう何もする気になれない。同期のあいつの評価はきっと自分より良いのだろう。
  2. 評価する上司にみる目がないのだ。評価基準が曖昧で納得できない。自分が「B」のはずはないのだ。
  3. まだ中間評価だし、残りの期間を頑張ろう。
  4. 「C」じゃないからいいかな。飲みにでも行って気持ちを切り替えよう!

この違いこそマインドセットの問題である。1や2は固定志向のFixed Mindset(固定マインドセット)に基づいており、3や4は成長志向のGrowth Mindset(成長マインドセット)に基づいている。

つまり、Fixed Mindsetは固定した価値観に基づいており、自分の中に何か基準を見出しそれに照らしつつ理解しようとするマインドである。そういう意味ではクローズドであり、悪いと考えれば落ち込むような傾向を示す。

一方、Growth Mindsetはオープンな思考で、客観視しつつ落ち込まない。気持ちを切り替えて次を目指すような傾向を示す。そして何か事をなそうとする時、チャレンジする時、困難に立ち向かう時に有効なのはGrowth Mindsetである。

優れたスポーツ選手でも、身体能力が高いとか元々才能や運動センスがあるというよりも、常に目標をクリアしようとする向上心の方が大事であると言われる。前者はFixed Mindsetによる価値観であり、後者はGrowth Mindsetによるものだ。

"Mindset"[2]にはMindsetの解説だけではなく、Growth Mindsetを身につける方法や難局においてどのようなマインドが求められるかについて詳しく書かれている。

しかしGrowth Mindsetは、なにも難局だけに必要なものではない。むしろ日常行動において求められる「気持ちの持ちよう」として大事なものだ。特に人脈を築こうとする時、新しい知識・技術を習得しようとする時、新企画をプロモートしようとする時などである。

人脈の形成は、単に「人脈を広げる」と捉えない方が良い。むやみに広げても、対応に苦慮するところもありひいては信頼を傷つけることもありえる。やはり、視野を広げたり協働して何か新しことにチャレンジする可能性を高めることにつながるようにすべきである。つまりは「境界を超えた連携=越境:Closed Boundary」である[3]。

視野を広げるため、新しいことにチャレンジするために、他領域の人、専門家や研究者と交流し、多くのヒントを得ることはとても重要だ。それを成すには、マインドをオープンにする、つまりGrowth Mindsetは欠かせないものである。


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参考情報
[1] 一般的な評価尺度には「S」「A」「B」「C」があり、それぞれ「5%」「10%」「65%」「25%」などと分布が決まっている。つまりこの分布を基に成果を当てはめるのが業績評価である。
[2] "Mindset"(Carol S.Dweck、Random House、2006)『「やればできる!」の研究』として翻訳版もあるが、原著版で読むことをお勧めする。
[3] 筆者は「越境力」と言っている。