生産性の未来

 日本企業は長い間、先進国と比べて生産性が低いと言われて来ました。特に知的労働とサービス労働の生産性向上が課題であると、Peter F. Druckerは言っています。そこで、日本企業も様々な生産性改善に取り組んでいます。ですがそのアプローチは先進国の取り組みとはやや異なるようです。それはインプット(資源:従業員数)とアウトプット(目標:営業利益額)のあり方で見ると良く分かるという説があります(1)。例えばフォーチュンの上位企業はアウトプットの改善に重点を置いているそうです。元々従業員数をコントロールし易い経営慣行の中にあり、既に業務の生産性を高いレベルにしてしまっている先進国企業は、インプットを維持したままアウトプットを高めようとします。一方の日本企業は、どちらかへ比重を置くというよりもビジネス変革とかスケールメリットを高めることに注力しているようです。日本企業の生産性も向上しつつありますが、欧米先進国の方が向上の度合いが大きいので差はますます広がっているようです。

 インプットとアウトプットの差による生産性変化をゾーン分けしてみると、スリム化して筋肉体質といえるもの(リーン型)から、肥満体質のもの(スラック型:スラックとは無駄やたるみのこと)まで6段階あります。アウトプットがインプットを上回る(高生産性)ゾーンにはダイキンやスズキやデンソーなどがいます。パナソニックやNECもリーン化は進んでいます。そしてキヤノンは、スラック成長と呼ばれる最も低いゾーンに位置しています。原因はM&Aや改革のやり方にあるようです。どうもキヤノンのスラック化は2005年以降に始まったようです。M&Aや改革が悪い訳ではないですが、当然インプットの増加を伴います。そして効果が現れるまで時間がかかるため、低い生産性がボディブローのように効いてくるといいます。Druckerの説によると『必要のない仕事』をしているとか、『仕事に集中できない状況(2)』が問題なようです。この2つが感じられる状態が、いわゆる知的労働とサービス労働に生産性が低い状態であると言えるようです。Jason FriedはTEDの中で、問題の本質は「M&M」であると言っています。管理職のM(Manager)と会議のM(Meeting)です。会議については以前キヤノンのプレゼンでも触れましたが、情報共有などはメールや掲示板やチャットなどを使用し、会議形式で行うのは極力減らすべきです。ミーティングは定例化せず、必要な時に短時間で行うべきです。とにかく知的労働とサービス労働の生産性向上については一度真剣に考えた方が良さそうです。


(画像出典:Creative Commons at Flickr:http://urx.mobi/FAJe)

参考:
(1) 知識労働とサービス労働の生産性 http://www.dhbr.net/articles/-/4873
(2) あなたはなぜ職場だと仕事に集中できないのか?(Jason Fried) http://logmi.jp/69470