事例の功罪
Published by 松原幸行,
「事例」というものはとてもモヤモヤする。
『こんなサービスが欲しかった』には、たくさんの"一味違う"事例がのっている。確かに事例を見たり聞いたりすると『あぁなるほど、そんな風に実践するのか』と納得する。ただその後すぐ、WHYやHOWの疑問がたくさん沸いてくる。
某社と自社では組織形態も制度も環境も文化も違うため、事例をそのままでは移植できない。参考にはなるが使えないのである。
おまけに、世の中の標準的なプロセスとは違う部分があり、一体どうやってアレンジしたのか判断基準やアレンジの方法などを知りたくなる。だが多くの場合、そのあたりは社外秘が多く話す方も歯切れが悪く、結局は煙にまかれたようになる。
やはり、本当に役立つ生きた事例を得るためには、推進した当事者にできれば現場で直接会い、Q/Aを重ねながら聞くしかない。
参考にする事例は、他社に先んじたものや秀でたものでなければ意味がない。このような事例をベンチマークという。したがって、他社の事例を知る活動を「ベンチマーク調査」という[1]。
ベンチマーク調査ではギブアンドテイクが前提となる。したがって、先方からも情報の開示を要められる。ギブ・アンド・テイクである。つまり、一方的に情報を得る(TAKE)のではなく、こちらの事例やノウハウを紹介(GIVE)し、その中からお互いに学び合うのである。本当の意味で他社の事例を参考にしたいなら、この調査形式を取らざるを得ない。
よくある事例セミナーなどでは表層的な話しか聞けないので、聞くほどに疑問や質問が湧いてくるのだ。その解消はセミナー後の懇親会などを活用するが、話者を独占できるわけではないので中途半端になりがちだ。
疑問やモヤモヤを自分なりに解消する方法としては、セミナーの事例を聞いた後で、WHYやWHATやHOWを整理すると良い。セミナーに自社から複数人が参加しているのであれば、集まってブレストを行う。WHY/WHAT/HOWをラダリング[2]で紐付けながら整理すれば良いだろう。勿論、事例で述べられていたWHY/WHAT/HOWも加える。分からない(紐付けられない)箇所が出てきたら仮の言葉で便宜的に埋めておけば良い。
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参考情報
[1] 他社の事例を基に自社のプロセスや方法を改善するための課題を明らかにする活動、「ベンチマーキング」と進行形で表現する。
[2] 人の意識や、ブランドのベネフィット等を階層構造で理解する - https://www.dm-insight.jp/data_analysis/laddering.html