スケールアウト
Published by 松原幸行,
拡大を意味するスケールアップに対して,変革を意味する「スケールアウト」という言葉がある.パラダイム的には,スケールアップが経営視点で経済性を重んじるのに対して,スケールアウトは組織視点で経済性は重視しない.スケールアップは競合する組織が現れると劣位になるが,スケールアウトは積極的に変革しようとする点で強みがある.スケールアウトは組織変革であると言える.もう少し言えば,スケールアップは量的拡大で,スケールアウトは質的革新.前者は経営視点だから,量は商品/サービスで稼ぐ.後者は組織視点だから,質の革新は人でやる.人が大事なのである.
1つの事例は,地域と地域をつなげ異文化の知恵を掛け合わせて新しい文化を広め地域の起業家を支援する活動を行っている,「World in Asia」の活動にみることができる(1).この活動は,政府支援の届かない震災復興の現地オルナタティブとして,文化人類学の視点からスタートしているとのことである.インターローカル(InternationalでLocal.国境とは関係のない地域間の関係性,あるいは近隣の地域との関係性のこと)な活動で,地域と地域をつなげて異文化の知恵を掛けわせて新しい文化を創っている.若い人たちが積極的に関わっているようだ.
もう1つは,産後ママのメンタルケアなどに取り組む「マドレボニータ」という団体である.今までは,せっかく出産というおめでたいことであっても,子供がいると友人知人にもなかなか会えず疎遠になり,公助共助も少ないことで産後鬱になったり幼児虐待をしてしまうなど,悲しい事態となりがちであった.そこで産後ママが連携し,心のケアを通じて互いに支え合う共助のような組織を作ったのである.これはチーム型のスケールアウトだ(2).
つまりスケールアウトするためには,自力以上の力が必要である.そういう発揮力は,セミナーなどでは磨きがかからない.宇宙船がスイングバイで宇宙に飛び出すような,視点を変える共助の形が必要だ.スケールアウトは,目的を共にする人たちが集まってよい関係を構築し協働しながら,社会的な活動を行うものである.その意味では,ソーシャル・センタード・デザインの1つとみることもできる.
"mikihiro_kiriyama"のインスタグラムより引用(http://bit.ly/2Fq6zJX)
(1) World in Asia:http://worldinasia.org
(2) マドレボニータ:https://www.35.madrebonita.com