知識デザイン

知識デザインは,社会(またはコミュニティや個人)に必要な知識を認識し,獲得し,活用する方策を得ることである.富士ゼロックスでは,ナレッジマネジメント[1]における技術獲得の一環で「知識デザイン研究」の研究プロジェクト推進を研究所が行っていた.

彼らの構想は,知識デザインという切り口からナレッジをマネージメントする技術を開発し,商品化することである.先に述べた通り,知識デザインの関心事は「必要な知識をどう獲得するか. そしてどう活用するか」である(活用の中には共有化や可視化も入っている).その答えは,例えば,「翻訳コピー機能の技術」(英文の原稿が翻訳され日本語文でコピーされる)であったりする[2].富士ゼロックス流に言えば,ドキュメントサービスを実現するためのドライバーでもある.

知識を顕在化させるモデルとしては,一橋大の野中郁次郎氏と竹内弘高氏による有名なSECIモデルがある[3].但し,SECIモデルは知識の成熟に比重があり,経営の視点に弱いところがある.ウェブで検索すると,知識デザインを,どちらかというとUXデザインの意味に解釈する向きもある[4].工学的に考えると,NTTデータの山本 修一郎氏の説「知識創造デザイン」の概念が近いであろう[5].

「写真を撮る生活」 をライフスタイルとしてとらえるやり方はポピュラーであるが,それを知識デザインの観点から見つめ直したら,面白いかもしれないし,新しい切り口となり得ると思う.旅行に行ったら,帰宅した時点でもうアルバムが出来上がっている,などなど… AIの台頭で活用の範囲もスピードも変化するであろう.

なおデザインとは体系的なものであるので,知識をデザインすることは,知識のマネジメントについて体系的な見識を得ることになる.そして知識の拡大や活用をコンサルできることにもなる.「デザイン学」というものはそういうものを目指していると思う.



"stuartlandriganarchitectptyltd"さんのインスタグラムより引用(https://www.instagram.com/p/Bn2DAQ7Bzm8/?hl=ja&taken-by=stuartlandriganarchitectptyltd

参考情報
[1] 企業経営における管理領域のひとつ.生産管理,販売管理,財務管理,人的資源管理,情報管理に続く第6の管理領域.個人のもつ暗黙知を形式知に変換することにより,知識の共有化,明確化を図り,作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法のこと(wikipedia).
[2] コピー機感覚で書類を機械翻訳、レイアウトは維持したまま http://www.itmedia.co.jp/bizid/spv/1211/05/news065.html
[3] SECIモデル(ナレッジ・マネジメント) http://www.osamuhasegawa.com/seciモデル/
[4] 知識デザインについて https://blog.goo.ne.jp/urat2004/e/de5f204c08da529f1e4c58b19a59e9b1
[5] 総論:知識創造デザイン技術の展開(PDF) http://www.ntt.co.jp/journal/0805/files/jn200805008.pdf