知をまとめる

 知をまとめるのがどれだけ素晴らしいかという話です。知はまとめてこそ「利用できる知」となります。逆に言えば、個人に内在するだけでは利用できず、物事・社会には貢献しません。個人も成長しません。そのため世間では、「集合知を活かす」ということが盛んに行われています(1)。また知は知を生み成長します。野中郁次郎も暗黙知と形式知という言葉を使って「知は新たな知を生む」と言っています(2)。

 知をまとめる形式は色々ありますが、一番はレポートです。私がキヤノンに来て一番驚いたのは、社内レポートや議事録を書かないことでした。社内レポートとはつまり技術論文(Technical Report)の事です(3)。私も、自分が書いたレポートに他部門の部門長や役員からコメントを貰い興奮したことがあります。富士ゼロックスの研究部門では、主任になると、取締役が直接、論文要旨の書き方を指導します。論文の中では要旨が一番難しいし大事だからです。もうに一つのレポートは、ガイドラインやスタイルガイドです。そしてPDCAのAとは、レポートを書く事であり、ガイドラインやスタイルガイドをまとめることであり、知財化することです。デザイナーの仕事として大事なのは、勿論良いデザインを生み出すことですが、ビジネスマンとして考えればPDCAを回すことも同じくらい大事です。その意味でスタイルガイドをまとめることは賞賛に値し、価値のある成果だと言えます。そして知が知を生むように、成長するきっかけとなるのです。


(画像:筆者撮影)
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(1) 集合知を活かす技術 http://www.d-laboweb.jp/special/sp113/
(2) 野中郁次郎の名言 http://systemincome.com/60744
(3) 富士ゼロックスのテクニカルレポート https://www.fujixerox.co.jp/company/technical/tr/2016/ (社内にあまたあるレポートから厳選されたものが出版されています)