1ランク上の経験
Published by 松原幸行,
サステイナブル開発において重要なポイントの一つに「ランクづけ」という概念がある。車、カメラなど製品の同じ系列で主に性能・機能をより高度にした(ランクアップした)製品を開発し切れ目ない製品系列を作ることである。この系列を「ラインナップ(line up)」という。
ラインナップを充実させることで、幅広いユーザーのニーズに応えることができる。しかしここでは少し違う視点について考えてみる。
例えば、コロナ禍の下で、日本人の我々は1ランク上の経験をしているようだ。それは世界各国の死亡率の差をみてみれば分かる[1]。欧米に比べて日本は奇跡的に死亡率が低い。正確には欧米に比べてアジア各国の死亡率が低いというべきだが、強固な"ロックダウン"で対応した中国、プライバシーを犠牲にした韓国に比べて、"セルフダウン"で乗り切った日本は異質である。
アジア各国の死亡率が低い理由は色々言われているが、決め手はないと言われる。某氏によると主な理由には次の3つであるという。
- 同調圧力に弱い
- 幼児期にBCGを接種している
- 密接しない習慣がある(キスやハグの挨拶をしない)
同調圧力に弱いとは、協調性を重んじる行動規範の裏返しであり、文句を言いながらもルールに従う日本人を揶揄した見方である。時として「空気を読む」などと言われる。確かに欧米人には無い処世である。
BCGについて言うと、ヨーロッパでも行っているが接種しているデンマーク株である。日本は日本株とソ連株の2種類を接種している[1]。この違いはあるが、中国や韓国と死亡率はそう違わないので、これらの国との違いが説明できない。
密接しない習慣も、欧米との違いを説明するには都合良いが、これだけでは中国や韓国との差は説明できない。
私は、「住まいにおける脱靴習慣」というのが大きいと思う。靴を脱ぐので家内が汚染されずクリーンである。おまけに我々日本人は、帰宅したら手を洗うように小さい頃から躾けられているので普段から良く手を洗う。風邪や花粉症予防で日頃からマスクをしている人も多い。中国や韓国と比べても顕著であると思う。
これを「1ランク上の経験」とするには文化的なコンテクストと関係に着目しなければならない。
文化という視点で考えてみると、例えば、新たにチャレンジしたこと(=新たな経験)に慣れたり、習熟してパフォーマンスを発揮できるようになった段階の高揚感がある。これを"1ランク上がった感じ"と言えなくもない。
つまり、性能や機能を凝らして上質感高級感を出すというモノ志向では無く、新たな経験というコトが大事になってきていると、あらためて思う。ここで大事なのは、経験を提供しただけでは不十分で、慣れたり余韻を楽しんだりできるような「体験の後」も含めた経験というとらえ方をするということではないだろうか。
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参考情報
[1] BCG有無でコロナ死亡率「1800倍差」の衝撃 日本や台湾で死者少ない「非常に強い相関」 https://news.yahoo.co.jp/articles/8f0634eda0ece2b364664f69a29fbabd684ccb3a