病院とPX
Published by 松原幸行,
PXとはPetient eXperienceのことである。つまり、病院における患者の経験だ。
UXの成熟にともなって、病院のスタンスも「医療サービスの提供」から「(患者への)新たな治癒経験の提供」へと、進化していくべきである。良い治療経験を提供するために医師と看護士がデザイン思考プロセスを導入した改革を行うわけだ。
患者の治療経験の向上に努めることで、口コミ(word of mouth)で評判が広がったり、「ご贔屓の病院」や「ご指名すべき名医」など、医療へのエンゲージメントが形成される。
最近の大学病院は、患者のカルテが進化していて、CRM(Customer Relationship Management)を見ているようだ。入院計画や投薬計画などのインフォームドコンセントの書類化も進んでいる。医療カンファレンスでは、すでにデザイン思考に近いものも導入されている。何より、患者へのコンタクトがとてもソフトであり、通路ですれ違っても、医師や看護士の誰もが会釈をする。ナースセンターは「治療コンシェルジュ」のようだ。これらはみなPXの向上に寄与するものである。
IT化に関しても、医学系学会とネットでつないだ「ライブデモ」と呼ばれる内視鏡手術の中継が、病院と学会の大会会場をつないで実施されている。ロボット医療の「ダ・ヴィンチ」システムも着々と普及しているようだ。これらは今度ますます普及し進化するであろう。最先端の手術が普及し、患者負担の少ない施術が広がれば、こんな嬉しいPXはない。
看護士が患者への看護方針を決めるツールとして考案した「グランデッドセオリー法」という調査方法がある。インタビューを積み上げて、ビジョンを明確にする手法である。まだ日本では普及していないようだが、普及すれば患者ごとの治療のカスタマイズもより的確なものになるかもしれない。
PXという意味では、実際に患者となり病院での生活を体験しないとわからないのかもしれないが、じっくり視察をするだけでも得るものはあるだろう。一度経験してみてはいかがか。
By William Simpson (artist, 1823–1899)E. Walker (lithographer, lifespan unknown, working for Day & Son)Publishers: Paul and Dominic Colnaghi, London; Goupil & Cie, Paris; Otto Wiegel, Leipzig.Restoration by Adam Cuerden - https://wellcomeimages.org/indexplus/obf_images/a3/ac/734d0b4d5c31bb4ed35072db6b23.jpgGallery: https://wellcomeimages.org/indexplus/image/M0007724.htmlWellcome Collection gallery (2018-03-21): https://wellcomecollection.org/works/ssfhw5uq CC-BY-4.0, CC 表示 4.0, (https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38243931)
参考情報
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