ディストピアなデザイン

ディストピアなデザインは、Sci-Fi(Science Fiction Movie)のメインストリームとして、様々な映画で用いられる。例えば、『ブレードランナー』『アイランド』『ゼロの未来』『トータルリコール2』などなど[1]。「ディストピア」という名をつけた映画すらある[2]。

それらの映画の中で、ディストピアの反対(ユートピア)を象徴的に描くのは、白い無機質な空間に白い服という場合が多い[3]。しかしこれは、ディストピアを際立たせるための演出でしかない。現実をディストピアとして描いているとすれば(ブレードランナーなど)その「現実」の反対(虚構)の象徴であるとも言える。『2001年宇宙の旅』でも、最後にポーマン船長が行き着くのは、白い無機質な空間である[4]。

ディストピアなデザインを得意とするデザイナーの筆頭は、『ブレードランナー』や『エイリアン』でおなじみのリドリー・スコット(Ridley Scott)氏だろう。スコットが生み出した象徴性には次のようなものがある。

1. 機器をエイジング(古臭くする)する。
2. スモークを怪しげに張る。
3. 日本語を巧みに取り入れる。etc.

これらは、ディストピアデザインの定番的な表現である。
ディストピアデザインのポイントは退廃さをいかに演出するかであろうが、ユートピアデザインのポイントは何であろうか。

ユートピアを描いたSci-Fiムービーの代表作は『スタートレック』であるという[5]。それは、全ての戦争が終わった後を舞台としているからだろうか。人間はエイリアンと仲良く暮らしているし、活力に満ちている。

そう考えると、ユートピアデザインのポイントは「退廃さ」というような感性的なものではなく、戦争終結とか、異星人との共生とか、超長寿生命とか、なにかポジティブで実利的な意味が先にないといけないのだろう。その上で先の「白いアレンジ」を与えることで再現できる。

小生は、この辺りの、Sci-Fiムービーからデザインのヒントを探った本に訳者として参加している[6]。割りと好評なようでまだ書店に置いてある。ご興味のある方はどうぞ。


hudson_bay_canada_sea,(http://ja.gofreedownload.net/free-photos/winter/hudson-bay-canada-sea-190259/#.XOKFvS_AN25


参考情報
[1] 「おすすめディストピアを描いた映画10選」> https://www.tetsugakuman.com/entry/dystopia10
[2] 『ディストピア パンドラの少女』:原題は『THE GIRL WITH ALL THE GIFTS』> https://www.youtube.com/watch?v=KnNDv0CG2bc 『ディストピア2049』:原題は『DEFECTIVE』> https://www.youtube.com/watch?v=LfWPTqS2Q3g
[3] 『アイランド』> https://www.youtube.com/watch?v=91SMVT1RiPA
[4] 「『2001年宇宙の旅』に登場する「第四のモノリス」こと白い部屋を完璧に模したインスタレーション」> https://fnmnl.tv/2017/04/01/26414
[5] 「いまこそユートピアSFが必要な理由」> https://www.gizmodo.jp/2018/11/why-we-need-utopian-sf-now.html
[6] 「SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン」> https://www.amazon.co.jp/SF%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%81%A7%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3-%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A2%E3%81%A8%E6%83%B3%E5%83%8F%E5%8A%9B%E3%82%92%E9%8D%9B%E3%81%88%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE141%E3%81%AE%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B9%E3%83%B3-Nathan-Shedroff/dp/462108836X