コリビングに思う

2019年の5月に、「ADDress」という定額住み放題サービスがスタートした。いわゆる「コリビング」の一種だ[1]。

コリビングといえばシェアハウスが頭に浮かぶが、シェアハウス業者2社が倒産し、ビジネスは頭打ちとの噂も聞く。イノベーター理論をもとに考えると、まずイノベーターが住み始め、現在はアーリーアダプターが住まい始めている段階だと思う。この段階における異なる選択肢として、"一緒に住むコリビング"ではなく、"住居を共有するコリビング"が注目されているのではないだろうか。

ADDressは、この、"住居を共有するコリビング"のサービスである。住居を共有すると言うと、複数のオーナーで共用する"タイムシェ型リゾートハウス"に似ているが、全国至る所に住居があり、1週間単位だがいつでもどこでも利用できる点を特徴としている。複数の住居に住むというのは、負担は大きいが、それぞれの特色の中で住み方に変化が生まれて、なかなか良いものだ。

ADDressの競合は、シェアハウスとかタイムシェア型リゾートハウスではなく、「ロングステイ型の旅行」の一形態であると思う[2]。1週間滞在すれば、周囲を散策したり土地の人と話したり、名所めぐりの観光旅行には無い楽しみがある。できれば、冬は沖縄、夏は北海道などと、季節に応じた住まいがあると良いと思う。ADDressは魅力だが、年間48万円&1滞在4万円、というのはちょっと高い。

企業ではなく、地方自治体が行うJターンやIターン推進の手前に位置付けられる自治体サービスの1つとしてはあり得ないだろうか。現在は、自治体のロングステイというと、「湯治場」のようなものになってしまう。

少子高齢化の中で空き家が増えているが、神奈川県における平成25年度の空き家数は48万6千戸である(戸建/賃貸含む)[3]。この数字は年とともに増えている。「空き家の有効活用」が行政課題の一つであり、SCD(Social Centered Design)のテーマとし期待したいものだ。




Thatched cottage in the sand dunes by Denmark. By Michael Gäbler.(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Thatched_cottage_in_the_sand_dunes_by_Denmark.jpg?uselang=ja

参考情報
[1] 「全国住み放題「ADDress」で、日本中にあなたの田舎をつくろう」> https://www.makuake.com/project/address/
[2] 「ロングステイとは』(一般財団夫人 ロングステイ財団HP:https://eiicon.net/companies/8189)> 記事は https://www.longstay.or.jp/longstay/
[3] 「神奈川県の空き家の数と空き家率」> http://www.pref.kanagawa.jp/docs/zm4/akiya/documents/akiyanogenjou.pdf