New Old とOld New

New Old Stock(NOS)という言葉がある[1]。「長い間在庫としてストックされていた新製品」という意味だ。新製品として陳列されたが売れずに在庫となって保存されたものを指す。これが何かの都合で世に出ると、新品だが古臭く見える。New Oldとはそういうものだ。

一方、これに近い感覚として、新製品だが何となく古くさいなと思うことがある。NOSではないが古くさいイメージで新鮮味が無い、アレに似ている、前にどこかで見たことがある。いわゆる「既視感」というやつだ。既に古くさい(old)新製品(new product)という意味で「Old New Product」となる。

New OldもOld Newも二つの品詞が続き分かりにくいが、対比的に使えるので重宝する。

ただ、New OldとOld Newの感覚の差には注意が必要だ。New Oldは長い間在庫としてとどまった新品であるのに対して、Old Newはあくまでも"新規にマーケットインされた"新製品や新サービスである。

アウトレット店では、New Oldなビンテージものがたまにある[2]。電気製品の量販店などで型遅れで安く販売している製品もNew Oldと言えなくもない。これらはビンテージ品質とか安値などの価値が、購入の意思決定に大きく寄与している。"新製品ということに価値を見出さない顧客"はいるのだ。

一方、新製品なのに古くさく見えるOld Newはデザインの問題を含んでいる。したがって、"新製品ということに価値を見出す顧客"にもそっぽをむかれる。

製品のコモディティー化はOld Newを生み出しがちである。似たような製品が他にあるからだ。自動車や時計や家電製品やデジタルテレビやカメラなど、多くの分野に見られる。

これを回避しようとして安易に機能を削ったりある機能に特化したりすると、ニッチな商品となってしまう。潜在ニーズはあるが狭い市場であり、大きな利益は見込めない。

サービスの方を見てみよう。

配置販売業で全国に広がった越中富山の「おきぐすり」は、社団法人が設立され、現在も続けられている[3]。富士薬品の「配置薬」とか、トモエ薬品の「置き薬」などである[4]。

江戸時代に全国規模になったのは、使った分だけ支払うという便利さ[5]だけでは無く、薬売りを通じて村の外の情報を得るという付加価値の方がありがたかったという事情による。それは、新聞もテレビもインターネットも無い時代の唯一の情報メディアであった。薬売りは情報提供サービスも司り、ある意味村人は、薬売りが来るのを心待にしたのだ。便利さの価値だけではないわけだ。

営業マンが定期的に訪問する補充方法はもう少し何とかならないかと思っていたら、ネット注文&宅配という、アマゾン流のサービスが検討されているらしい[6]。IoT技術を使って、もう少し効率的かつオンデマンドにできないものか。

たとえば、年間契約した上でネット回線を使って使用料をモニタリングしオンデマンドで宅配すれば良い。オフィス複合機などで用紙やトナーを補充するやり方と同じだ。

震度7級の地震が来る確率が30年以内に70%と言われる今日、震災への備えが欠かせないが、防災用品などは配置販売方式が良いと思う。震災後、実際に使用し始めた時にどう補充するかは難題だが、使用しながら補充できている仕組みは安心だ。


"kcappak"さんのインスタグラムより引用(https://www.instagram.com/p/B6hy4pmgmZf/

参考情報
[1] New old stock(Wikipedia)> https://en.wikipedia.org/wiki/New_old_stock
[2] New Oldをテーマにした家具屋さんもある「CRASH GATE」> https://crashgate.jp
こんなビンテージフォトが合いそうだ「New old stock vintage photos」> https://nos.twnsnd.co
[3] 一般社団法人 全国配置薬協会 > https://www.zenhaikyo.com/index.html
[4] 配置薬 > https://www.fujiyakuhin.co.jp/home_medicine/ 置き薬 > https://www.tomoe-yk.co.jp
[5]ビジネスモデルとしてみれば「先用後利」という。英語では「First use, pay after」という。
[6] 顧客との絆をつくる"富山の置き薬商法"最前線 > https://www.tkc.jp/cc/senkei/201010_special01