ノスタルジスト

 11月10日にHCD-Netサロンがあり、先月ご紹介したプレゼンは「ビヨンド・シンギュラリティとUX」というタイトルで40分程話をしました。2045年に向けて徐々にAI(Artificial Intelligence)とロボットに支配される社会になるわけですが、このような状況で、人々の楽しみや幸福感や仕事はどう変わるかについての仮説です。

 楽しみの部分では、体験そのものが擬似化・仮想化されるので、体験より前の段階(予期的UXという)が大事になります。仕事の面では、人からAI/ロボットへの置き換えが進むのは否めませんが、新たな仕事もたくさん生まれます。その一つに「ノスタルジスト」という仕事があります。ノスタルジストとは、ノスタルジーを語る、あるいは相談に乗ったりコンサルしたりする職業です。今で言えば小説家や一部のセラピストなどが該当します。人間がコンピュータを支配している昔は良かった、というノスタルジーを生きる糧とするようになるので、そのような夢想や空想を導く手助けをする人、というような意味でしょう。(まだ出現していないのでよく分からない)

 ところでノスタルジーというのは良い面もあって、「ノスタルジーは自己評価を高めてくれたり、人生の意味を見つけたり、孤独に立ち向かったりするのにも
役に立ち、多くの点で有益である。」とされ、身近な他者(友人や家族や恋人)との幸せな思い出が良いと言われています。反面、「過去のことを考えるのに時間を割くあまり、新しい思い出が作られなくなる。そうなると、新しいことをしない、新しい思い出が作られない、新しい出会いを楽しまない、新しい物事を学ばない、という悪循環を生み出す。」と悪い面が指摘されています。

 ところで、「ノスタルジスト」という短編SFもあって、その中では「理想的な未来環境で暮らす親子。だが、真実が自分たちの目に見えるものと同じだとは限らない。」という恐ろしいサブタイトルとともに、ロボットが人の目に細工をしている様子がのっています。悲惨な現実を直視させない配慮、ということでしょうか。


(画像出典:Creative Commons at Flick http://ur0.work/A1kB

- 将来、人工知能にのっとられない職業14選 http://ideasity.biz/new-jobs-of-future-14selection
- 「ノスタルジスト」第10回 札幌国際短編映画祭より http://sapporoshortfest.jp/15/programmes/i-c
- Lifehacker「懐かしい気持ち」がもたらす、意外なメリット」 http://www.lifehacker.jp/2015/02/150217how_to_use_nostalgia.html