日本のマジカルナンバー

認知心理学で提唱されている「マジカルナンバー」といえば「4±1」が有名だが[1][2]、日本には、慣習的に定着しているマジカルナンバーがある。それは「3」である[3]。

日本では、江戸時代のはじめに全国行脚した儒学者 林春斎により、松島(宮城県)、天橋立(京都府)、宮島(広島県)を指して「日本三景」というものが紹介された。このような「三でままとめる慣用句」が日本には数多く存在する。

三景以外にも、三大○○、三人姉妹、三人官女、御三家、三種の神器、三位一体など,とにかく「三」 でまとめる表現が多い。

NHK出身の評論家 池上彰氏も良い講演をする要点は次の3つであるとしている。

1. 最初に話の地図を渡す。
2. 聴く人の立場になる。
3. 話は3つにまとめる。

要点も文字通り3つだが、その中でも3番目として「3つにまとめる」ことを説いている。

3つの良いところは、記憶のし易さ分かり易さと納得感ではないだろうか。1つや2つでは物足りないし、4つや5つでは多すぎる。3が丁度良いのである。それに3は、コーワン氏のマリカルナンバーとも整合している。

課題を共有して解決策を議論する時、あるいは、年頭に「今年の課題と施策」を考える時、「3つの課題と、対応した3つの施策」とすれば、抜け漏れもなく、かつ十分な計画となる。納得感があるのである。

昇格論文などもこの要領で、課題を3つにまとめ、それぞれに施策を立てれば、頭が整理できている、と評価される。なお、3つ課題・施策をあげる場合は、どのような場合も大きい順にあげた方が良いようである。

以上を総合的に考えると、その応用先の一つはUI画面に当てはめることができる。例えば、初心者向けの機器や公共端末などのUI画面のチャンク数(機能グループの配列やボタン配置など)は、3つを基本と考えれば、不馴れなユーザーでも分かりやすいものとなるであろう。

また、何かを説明する時に、たくさんあっても大きいものから3つだけを選んで説明すると、ポイントを外さず、概要はきちんと伝わる。

このように、「3」は日本に馴染み易いマジカルナンバーであると言えるのではないか。もっと応用/展開してみても良いと思う。


"carminegallospeaker"さんのインスタグラムより引用(https://www.instagram.com/p/BvUWrkkAAgo/

<参考情報>
[1] 短期記憶を促すチャンク数(記憶情報量として認識できるまとまりの数)のこと。当初「7±1」と言われていたが、2001年にネルソン・コーワン(Nelson Cowan)氏により見直され、「4±1」となった。従って現在の"短期記憶を促す最適数"は3〜5ということになる。
[2] 最初に導かれた7プラスマイナス1は、再実験の結果、否定されている。「マジックナンバー7±2の間違いと真実」
> https://uhuru.co.jp/mclab/marketing/psychology02/
[3] "The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity" > https://philpapers.org/rec/COWTMN