『日本文化の核心』by 松岡正剛

この本は、日本における「編集工学」の発起者でありISIS編集学校の校長でもる実業家の松岡正剛氏が2007年4月に執筆した著書である。講談社から出版されている[1]。

松岡氏は、リチャードソール・ワーマン(Richard Saul Wurman)氏と共に、「情報デザイン」についての私の師でありメンターでもある。と言っても、それは私が勝手に決めたもので、両氏の承諾を得たものではない。

「情報デザイン」の概念は『情報選択の時代[2]』という本に書かれている。著者がワーマン氏、訳者が松岡正剛氏である。

1990年の後半、当時、情報デザインのグループを立ち上げることになった私は、デザイン部門においてそのグループがどんな役割を果たすべきか思案しており、その過程でこの本に出会ったのだ。

ワーマン氏はTED(Technology Entertainment and Design)のカンファレンスを設立した人物で、「情報アーキテクチャー」という言葉を生み出した人でもある。当時、TEDのダイナミックなプレゼンに触発されて、デザイン部門からの情報発信はどうあるべきかメンバーと熱く議論したものだ。

さてこの本によると、日本文化は『古事記』や、<イザナギと三神(三貴神という)による国造りの物語>を起源としている。三神とは「アマテラスオオミノカミ」と「ツクヨミ」と「スサノオ」だ。

男神であったイザナギが三神を「成した」というところが面白い。「産んだ」のではなく「成した」のである。

『日本文化の核心』では日本人が尊んだものやその結果形づくられた「いとなみ」や「伝授伝承」について書かれている。

例えば、私が日本のマジックナンバーである[3]とした「3」は国が造られる段階から重要な数字であったことにも改めて気づかされる。奇数である3の重要性は「陰陽思想[4]」からもきている。

陰陽思想では、奇数を陽数として尊び偶数を陰数として嫌うのだ。だから正月は「三ヶ日」とし、子供の健康は「七五三」で祈願し、挙式では「三三九度」を行う。3は縁起の良い数字でもあるのだ。

その延長として、言葉の根幹をなす「五七調」や「七五調」についても言及される。これについては、『感性豊かな表現』というコラムで触れることにする。

なお、松岡氏は「日本的ミニマリズム」という言葉を用いて文化を説いている。盆栽でも茶室でも余計なもの余分なものを削いでいく考え方である。

李 御寧(イー・オリョン)氏によると、日本人は「縮み志向」であると言う(『縮み志向の日本人』(李 御寧、学生社、1982年)。しかし私は単に「縮む」のではなく、元からミニマムを尊ぶ、つまり本質を大事にする民族であると思う。いずれにしても、日本文化を深く理解したい人にはお勧めの本である。

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参考情報
[1] 『日本文化の核心』(松岡正剛、講談社、2007)
[2] 『情報選択の時代』(著:リチャード・S. ワーマン、訳:松岡 正剛、日本実業出版社、1990) - https://www.amazon.co.jp/情報選択の時代-リチャード・S-ワーマン/dp/4534016212
[3] コラム『日本のマジカルナンバー』を参照 - https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/ri-ben-nomazikarunanba
[4] 「陰陽とは、中国の思想に端を発し、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陰(いん)と陽(よう)の二つのカテゴリに分類する思想」である(Wikipediaより)