サプライズとディライト

あなたは映画館でポップコーンを買ったとする。そのポップコーンにキャラメルがかかっているのを見たときそれが「サプライズ(Surprise)」である。さらに、思ったより値段が安ければそれが「喜び(Delight)」である。SurpriseとDelightはそんな関係だ[1]。

SurpriseとDelightについては「スターバックス」の例がよく引用される。スターバックス流Surpriseのポイントは、予期せぬ経験(Unexpected experience)であることだという。「予期していない」ということがキーポイントなのだ。そしてそれは、勿論当然だが、ポジティブなものに限る。

ところで、Surpriseは顧客と向き合う人(例えばバリスタ)の自発的なものでなくてはならないということはない。最強なSurpriseは、綿密に計画されたものである[2]。

例えばスターバックスでは、コーヒーの産地で活動する詩人に詩を書いてもらい、それを詩集にしてお店で無料配布する。知的な好奇心とコーヒーの味の2つを楽しんでもらおうという企てである。

但し、企てたもの一つを全ての顧客に当てはめること(One Size Fit All)が良いのではない。詩集はあくまでも一例である。

"予期しない"ということの一例として、「Traveling Surprise(街角で行うサプライズ。鉄道の日であれば駅などへ行く)」がある。お店でコーヒーを無償提供したりする(Pull型)のでは無く、出かけて行って行う(Push型)のがTraveling Surpriseだ。その意味では「Surprise of Surprise」である。

なお、出先でイベントを行う際は、企業名は出さない方が良い。出すと押し売りのようになり下品である。ただ楽しさや喜びを提供することだけに専念する方がスマートだ。そして、そんな活動を多くの人に見せる(出会いを作る)ことで共に働きたい人も出てくる。つまりリクルーティングの良い機会ともなる。

スターバックスのバリスタは、顧客のファーストネームを覚えるという。紙のカップにもその人の名前を書いて渡す。「For Tom」というように。こんな素敵なSurpriseは、日本では難しいと思うが。。。

なお、Delightのためには一貫性もだいじだ。どこへ入っても同じ雰囲気で、同じ体験ができ、同じサービスを受けられると安心感や信頼感が湧き、ひいては贔屓になる。馴染んだ雰囲気が、また行こうという気にさせるのだ。

「One More Coffee(2杯目のコーヒーを150円で飲める)」サービスなどは全店舗で一貫したサービスであり、Delightそのものである。

顧客と向き合う人の自発的なものとしては、「経験の改善」がある。経験を改善できる可能性はUnhappyな(不安そうであったり困っていたりする)人にこそ見いだせる。お店の前を不安そうに歩いている通行人なども注意深く観察し、問題解決に協力するくらいの積極的な関与でちょうど良い。

スターバックスの事例に終始してしまったが、海外の都市を歩いていて一休みしたい時についスターバックスを探してしまう経験が多々あるので、事例として上げさせてもらった。


By Rs1421 - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16570067

参考情報
[1] 『The Starbucks Experience: 5 Principles for Turning Ordinary Into Extraordinary』(McGraw-Hill Education、2006、Joseph A. Michelli)より
[2] 「サプライズ」をビジネスに使うと有効な5つの理由 - http://www.i-i-b.jp/blog/2090/surprise-fives/