テレビを観ていて、CMになると急に音量が大きくなり、ウザイと感じることは無いだろうか。映画やドラマなどを観ている時は水をささられる感がひじょうに強い。ところが、民放が定めた規定[1]に従っているとするならば、プライムタイムのメイン放送とCMとでは、音量に差は無いようだ[2]。CMではBGMもあり絶叫に近い声でアピールするので、メイン放送よりも平均の音密度か高いせいで大きく聞こえるのだという。

音密度で思い出すのか1970年代に登場したデジタル録音である。当時はパイオニアにいたのだが、デジタル録音されたアール・クルーの「Finger Paintings」を目黒本社の視聴室で聴いた時に鳥肌がたったことを思い出す[3]。指がガットギターを弾いて出た音だけでなく、指が弦とこすれる余韻の音まで再現されていた。この盤は高音質録音で有名である。

密度が高いから迫力もある。でもやはり、メイン放送に観入っている時は、CMになった時の迫力には逆にイライラさせられる。心理学的に考えると大音量で振り向かせるのはむしろ逆効果であるとの説もある[4]。

そこでテレビのUXという観点から、「極力CMにイライラせずに番組に集中する方法」を考えてみた。

なんと言っても一推しなのは、1である。一時間番組の場合 CM時間は最大7分だから（プライムタイムの場合）、10分遅れて再生開始すれば追い付かずにCMをスキップしながら番組だけを見られる。これが確実にイライラを解消できる方法である。

2は、CM終わりを見逃さないためには画面を見続けなければならないのが負担であるが、追っかけ再生機能が無いデッキ（今はあまり存在しない）をお持ちの方にはオススメである。

3は、ダブル画面モードがあるデジタルTV（大抵ついている）では、CMの間だけサブ放送にする。但し、サブ放送でCMをやっていないことが前提である。また、サブ放送が意外に面白くて見入ってしまい、メイン放送の再開を見逃すリスクあり。でもこれはこれで良いのかも。

4は3と似ているが、機能を活用するという意味からも捨てがたいものである。データ連動画面には意外と良い情報がある。またこの手は、CM中にスマホを見るのでも同じ効果がある。つまりお手軽なのだ。

5は、東芝のレグザが該当するようで、音量の差を平坦にして聞きやすくしてくれるようだ[5]。ただし、筆者は使用したことは無いので、興味のある方はお店で体感して欲しい。

6はあえて逆説的であるが、家族や友人同士で観ている場合に有効な方法である。CMを観ながら、突っ込みどころを探して披露しあいながら議論する。気分転換にもなるであろう。ただメイン放送との気持ちの切り替えはやや難しい。突然メイン放送が遮断されるイライラも解消できない。

色々考えてみたが、1の「追っかけ再生機能の活用」がやはり確実である。

なお以前、ドラマ・アニメの「倍速視聴」についてネット上で賛否の議論があったが[6]、これは、録画した放送を短時間で観る方法である。観たい放送が沢山ある方には有効かもしれないが、放送に感情移入したり自己投影して観るとか、俳優の演技を楽しみたいという方には向かないのであろう。

By © Jorge Royan / http://www.royan.com.ar, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22546147

参考情報

[1] 民間放送連盟のテレビ放送における音声レベル運用規準（2012年10月）＞ 「テレビCMの音量ルールはあるの？」＞ https://www.jaro.or.jp/shiryou/topic/sonota/084.html

[2]「CMになると、音が大きくなるのはなぜ？「現在は音量が規制され、どの番組も同じになっている」＞ https://woman.mynavi.jp/article/140628-92/

[3] 「Finger Paintings」＊興味のある方は是非「Dance With Me」をお聴きいただきたい。＞ https://en.wikipedia.org/wiki/Finger_Paintings

[4] 「CMの音が大きいのはなぜ？小さくできない裏事情とは」＞ https://www.mamechips.com/archives/2853/

[5] 「CMになると音がうるさい！を解消する「ドルビーボリューム」とは？」＞ https://matome.naver.jp/odai/2133213103160814801

[6] 「ドラマ・アニメの「倍速視聴」はあり？なし？ ネット上で議論」＞ https://www.lettuceclub.net/news/article/104340/