UXライティングという仕事

UXというのは顧客の経験のことだが、それにライティングという言葉がついた「UXライティング」という仕事が注目されている[1].

UXデザインとどう違うのか,日本ではまだ理解が深まっていない.一般に,デザインが“視覚的な力"を用いて訴求するのに対して,ライティングは,新たに生み出す顧客の経験を“言葉の力"で伝え,訴求する仕事をする人である.ユニバーサルデザインにおいてハプティカル(触覚的)な要素も含めたデザインや,3Dタッチやオーディオトーンのフィードバックなどのインタラクションのデザインなどもあるが,ギャレットの5段階モデル[2]でいうSurfaceの部分は,主に外観的な審美性に軸足を置いている.グラフィカルユーザインタフェースというように..

ところが,社内外を説得したり訴求したりする段階で良いコピーライティングが生み出せない,端的に価値を伝えられない,など行き詰まる場面も多々ある.そこでGoogleやAmazon,Dropboxなどでは,テクニカルライターではなく,HCD/UXDを理解したライターという意味で「UXライター」の募集WO行うことが増えている.

つまりライティングというのは「言葉のデザイン」ともいうべきものである.UXをデザインする時,新しい経験の価値とか魅力を直接伝える(ストーリーテリングする)言葉は絶対に必要で,その役割を担うのがライターである.単なる文書表現やコピーライティングを考えるというだけに留まらず,UXの理解に基づいて経験のコンテンツを的確に伝えるライティング.言語学で言うところのシニフィアン(記号表現)を扱う人とも言えるかもしれない.サービスを語る言葉は「テクスト」であり,それ自体に意味を持つものである.「濃密うるおい肌」という言葉に,<非常にクリーミーでしっとりモチモチの肌にしてしまう魔力>を感じたりするわけである.

UXにはこの様な言葉のデザインが必要でる.これは寧ろ企業の中において有効なもので,デザインの価値を伝え社内で共感を得たり,コンセプトのブレを無くし的確にコピーライティングしたり,ストーリーテリングしたり,最適なシナリオやユースケースを描いたり,あるいはデザイン仕様書を書いたりする.言葉が必要なシーンは多々ある.そのような場面において,UXライターが求められる.

"broken_quotes_143"さんのインスタグラムより引用(https://www.instagram.com/p/Bm5HrYjhKd4/?hl=ja&taken-by=broken_quotes_143

参考情報:
1. UXデザイナーと何が違う?最近話題の新しい職種「UXライター」とは? https://ferret-plus.com/6007
2. The Elements of User Experience http://www.jjg.net/elements/pdf/elements.pdf