WHYペルソナを作ろう! 〜UXコラムより〜
Published by 松原幸行,
「Fixing User Personas」というコラムにペルソナに対する誤解について述べられている[1]。
まず第一に、WHATだけが書かれたペルソナは使いものにならない、ということである。WHATよりもWHYの方が大事であり、ユーザーのWHYに関して開発者全員で理解を一致させておく必要があるからだ。ペルソナの目的なそこにある。
WHYが共有されていない状態でWHATを議論すると論点が散漫になる。そういう似非(エセ)ペンソナは筆者も数多く見てきた。
もともとWHATで書かれたペルソナはマーケティング部門で主に作られ利用されてきた。通常、マーケティング・ペルソナでは、ユーザーの属性が列挙される。すなわち、こういうテイストや好きな音楽や好きなファッションを持ったユーザーはこうした商品テイストを好む、というように。いわばモノ志向であり経験の時代にそぐわない。
WHYには「行動の傾向」とか「仕事のゴール」とか「価値観」などが含まれる。これらは現場に見ずに推測して分かるものではなく、ユーザー調査を経て同定しなくてはならない。そういう価値観を持ったユーザーだからこういうデザインだしこういう機能なのだ、という具合だ。
ただしユーザリサーチは統計的なアプローチよりも心理学的な読み取りを大事にすること。すなわち、ユーザーのメンタルモデルや動機、問題点、態度、行動などを読み取るのである。
ここで一度、WHYに相当する事項を整理しよう。次のようなものである。
- 主要な問題点やニーズ(1つか2つ)
- 動機付けとなるものや態度、行動における傾向、価値観など
- ITリテラシーや技術的なノウハウの程度
- やるべき仕事やその流れや到達点(ゴール)など
- これらの情報をあなたに提供し補足し、より深く理解できるように助言できるキーパーソン
統計的な読み取り方をするとユーザーを比喩的なステレオタイプに当てはめてしまいがちだ。例えば「買い物好き」とか「フィットネス愛好家」「アップルオタク」などである。
インディ・ヤング(Indi Young)氏[2]いわく「説明を生き生きとさせ共感をはぐくむためには、ユーザーが示す好みと事実の背景にある理由をより深く推論しなければならない」のである。
またペルソナは結果が重要なのではない。作る過程が重要である。これもないがしろにされる傾向にあり、できあがったペルソナを評して分かりやすいとかおもしろいなどと言われたりする。
ユーザーを知る過程と、調査結果をもとにペルソナをまとめる過程の2つが大事ということは、これをチームで行い、そのチーム全員でWHYを共有するところでペルソナの使命は終わるとさえ言ってもいい。
なお、ペルソナは真のニーズを炙り出すことにあるので、数が多すぎても的を絞れなくなってしまう。スコープを調整して3人ないし5人にまとめるようにする。3人であればメインのペルソナとサブのペルソナ2人、というイメージだ。
また、ペルソナは変化の中にあるべきだ。新しい調査が行われたりユーザー情報を入手した時にはペルソナを更新させることも重要だ。是非、WHYペルソナ作りを開発チーム全員で取り組んでほしい。
Dschwen - 投稿者自身による作品, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=467113による
参考情報
[1] 『Fixing User Personas』 -
[2] Indy Young - https://indiyoung.com