幸福度を測る
Published by 松原幸行,
日立製作所が仕事と幸福感との関係を測れるしくみを作り、これを商材としたサービスを展開している[1]。
日立はこれまでも、MITメディアラボと共同研究した「ビジネス顕微鏡」というセンサーツールを開発している[2]。カード型のIDカード兼センサーで、人と人との接触度を測り分析することで、組織内におけるコミュニケーションの活性度や関係性を読みとるものである。組織改革への活用をめざしていた。ただ、組織の特徴に多く依存し一般化できないことから、コンサルティングの1ツールとして用いられるにとどまっていた。それをスマートフォンアプリとして技術応用し、人の幸福度を数値化するためのツールとしたのだ。
数値化した幸福度は「ハピネス関係度」と呼んでいる。「ハピネス」とは幸福感のことだ。
おおざっぱに言えば、スマートフォンアプリで体の揺れを読みとり、揺れが大きい時はハピネスとの相関関係が高いとしている。本当だろうかと思ってしまう。実際には、ハピネスを感じるのは、実際には、"何かをしているとき"ではなく、"何かをしたあと"であることがほとんどだ。
"何かをしているとき"はその"何か"に夢中であるため、ハピネスを感じる余裕はないはずである。その"何か"をしたあと、一呼吸の時間を過ごすときに、爽快感とか心地よい疲れなどとともに、ハピネスを感じる。
その時頭の中では、その"何か"について、思いをめぐらせている。つまりエピソード体験だ。
ここから言えるのは、ハピネスにおいては<新しい経験や体験をする>というだけでは不十分であり、<エピソード体験をいかに引き出すか>、がとても大事であるということだ。この部分の「経験」は経験している人にゆだねられているが、経験を提供する側にできることもあるはずだ。
例えば、個人的なエピソードを披露し合うような場をもうけるのはどうだろう。
「〇〇友の会」のような感じだが、そのような場をフォローアップの一環として運営し、参加者にハピネスを感じてもらうだけでなく、サービス改善につなげることも可能であろう。
あるいは、エピソードを記述してもらったりイラスト化してもらったりするワークショップを開催するのも一考である。「素晴らしい経験」がよみがえるような形で機会を提供すれば、「良い経験だった」と思ってもらえる確率も上がることが期待できる。
米国のアミット・バッタチャージー(Amit Bhattacharjee)氏とキャッシー・モーギルナー(Cassie Mogilner)氏の研究では、<素晴らしい経験をするほど幸福感を得る>と結論づている[3]。ようは、<素晴らしい経験をするとハピネスを感じる>という両氏の説をふままえつつ、提供した経験の価値を確認する手段を持つことも大事である、ということだ。
Camdiluv ♥ from Concepción, CHILE - Colours, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19871961による
参考情報
[1] スマホ1台で始める「幸せ」な職場づくり幸福度がわかれば、チームが変わる > https://social-innovation.hitachi/ja-jp/case_studies/happiness-planet/
[2] ビジネス顕微鏡の概要 > http://www.jfma.or.jp/award/05/pdf/paneldata07.pdf
[3] Happiness from Ordinary and Extraordinary Experiences > https://academic.oup.com/jcr/article-abstract/41/1/1/1810271?redirectedFrom=fulltext