動詞+副詞で発想する
Published by 松原幸行,
以前、 「コトの思考方法[1]」というコラムで、動詞的発想について次のように書いた。
「動詞的考察」とはモノからコトへ思考を変換する為のきっかけのようなものである。
これは、分かりやすく言えば「動詞的に発想する」という意味だ。製品や場所や特定の役割や人(例えば宅配業者とか)で発想するとそれは名詞的だし、どうしてもモノ思考になってしまう。モノ思考からコト思考に変えるということは、発想のスタイルを動詞的にすることなのだ。
これはアイディア出しでも同じで、たとえば「新しいカメラ」という製品ではなく、「新しい作法で撮る」とか「便利に記録する」いう風に動詞で発想する。最後の「撮る」とけ「記録する」という部分が大事なのである。「撮るとはどういうことなのか」「記録するとはどういうことなのか」を考えるのだ。つまり動詞発想に副詞的発想を加えると「UX思考」になる。
ところで、前述の「便利に記録する」だが、何を言っているか分からないかもしれない。記録したデータ(画像やテキストやQR情報)が "単にストックされるデータ"というにとどまらず、色々な用途に有効活用できるような形にして蓄えることを「便利」と表現している。
ついでに言うと、データの活用とはSECIモデル[2]の根底をなす視点であり、ナレッジマネジメントに資するだけでなくオフィスの生産性向上においても重要な視点である。「便利に記録する」という言葉にはそのような含意がある。
説明が長くなったが、言いたかったのは、「新しいカメラは?」という名詞的なアイディア発想を行っても、形や素材や構成が違う無数の"ちょっと違うカメラ"が産み出されるだけで、少しもイノベーティブではないということだ。ならば動詞+副詞で「便利に記録するとは?」と問うてみる。
"便利に"の部分の意図は先に示したようなことだから、具体的には次のようなアイディアが生まれるであろう。例えば、
・記録と同時に場所や天気などの6W1H属性も記録する
・記録したデータがクラウドの関連フォルダーに自動的に分類保存される。
・記録対象のIDを照合し特定できる。
・ライフログとなり健康管理ができる。etc.
これらはあくまでも、動詞+副詞で発想すると新しい用途や利用方法が見えてくるという例だ。動詞+副詞で発想すると新しい用途や利用方法が見えてくる。本来の英語の「Design」の意味は、"企画し開発する"ことである。造形や形態や状態や色を考えるのは開発の部分の一部だ。そして"今日における企画"の醍醐味とは、新しい用途や利用方法を考えることである。つまりリフレーミング(reframing)である。
By Kyidom Bright - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=76437484)
参考情報
[2] 「SECIモデル(ナレッジ・マネジメント)」>http://www.osamuhasegawa.com/seciモデル/