クリエイティブ脳について

『実践UXデザイン』でも書いているが、「クリエイティブ脳」とは、<日々の暮らしをよりよくするために、創造的な発想をうながしポジティブな思考をめぐらす土台となるもの>である[1]。

クリエイティブ脳 = 創造的な発想をうながしポジティブな思考をめぐらす土台となるもの

脳をそのような状態にたもつことが、クリエイティブな思考を行うためには必要である。発想が豊かであるとかポジティブであるというのは,脳が安定していてクリエイティブな状態にあることを意味する。この脳の状態が「クリエイティブ脳」である。

脳科学的な背景であるが、脳がクリエイティブな状態にある時は「ドーパミン」というホルモンが分泌することは知られている。このドーパミンが分泌するとき、「コルチゾール」という別のホルモンの分泌が抑えられるそうだ。コルチゾールは、別名「ストレスホルモン」とも呼ばれている。

コルチゾールとドーパミンは対立関係にあるため,コルチゾールの分泌が抑えられると、ドーパミンが分泌されやすくなるという[2]。このときクリエイティブ脳になるわけだ。

千葉大学環境健康フィールド科学センターの研究チームが、84人の被験者に森を散策させ、同数の別の被験者には都市の中心部を歩かせ、脳の生理機能について実験している。その結果、自然の中を歩いたグループはコルチゾールが16%減少していたそうである[3]。

これは、自然の中を散策したことでドーパミンが分泌されやすくなり、クリエイティブ脳が刺激される(同時にストレスが減る)ということを意味している。したがって、脳を休ませたり自然豊かな刺激を与えたりすると安定し、発想しやすくなるのである。つまりクリエイションしやすい状態になるわけだ。

発想ワーク、なかでも創造的な発想を行うには、クリエイティブ脳であることが必要不可欠だ。能がクリエイティブな状態にないと、発想ワークについていけず、不完全燃焼するだけだ。

最後にクリエイティブ脳を生み出す方法をいくつかあげる。方法といっても日常生活の過ごし方のようなものだ。これらを習慣づけると能をクリエイティブな状態に保ちやすくなる。

  1. いつでも書き留められる白紙かグリッド線のノート(罫線紙はあえて避ける)を携行し、何かアイディアやキーワードが思い浮かんだらすぐに記録すること。
  2. 静寂よりも適度な雑音の中に身をおくこと。その方が思考や仕事に集中できる[4]。
  3. 自分への質問を繰り返すこと。例えば、マクドナルドの看板にはなぜ黄色のMが使われているのか、など。
  4. 何か解決しなければならないときは、まず始めに容易にクリアできる小さい目標を設定すること[ 5]。
  5. 仕事の合間には緑の多い公園を散策するなど、頭を休める工夫を取り入れること。

似て非なるものをあえて比較し共通点をあげてみる、などもクリエイティブ脳を養う訓練になる。そしてときどき頭を空っぽにしたり、芸術や自然の中に身をおいたりすることも効果的である。良い芸術に触れたり良い建築物の中に身をおいたりすると感性も養えるので一石二鳥である。是非ためしてみていただきたい[6]。


Art creativity - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49214748による

参考情報
[1] 『実践UXデザイン』の5-1節、P118を参照
[2] ドーパミンとは
[3] 自然に癒される
[4] 『実践UXデザイン』の5-2節、P119を参照
[5] コラム『小さな問』を参照のこと
[6] 三気力メルマガで紹介しているイベント情報を活用していただきたい。リストは適宜更新しています