ニューノーマル化の中で進まないテレワーク

新型コロナウイルス感染の拡大を防止するために「行動変容」が求められている。具体的には不要不急の外出自粛やテレワークなどだ。渋谷や新宿、銀座などの主要な繁華街からは人気が消えている。ところがテレワークの実施率は28%とあまり進んでいないようだ[1]。

端的に言えば、オフィスワーカーにおける行動変容は「ワークスタイル変容」と解釈すると理解しやすい。ワークスタイル変容には生産性を向上する視点が不可欠である。削減とか抑制という苦しみが前面に出した目標ではなく、BCP[2]の一貫としてとらえ、対処療法的なものと中期長期的な施策を分けて考えるべきだ。「ワークスタイル変容」もこのような文脈での中で考えた方がいい。

新型コロナウイルス問題の中で「ニューノーマル(新常態)」という言葉が登場した[3]。コロナ対応と生産性の両面から、テレワークすることを前提にワークスタイル変容に取り組み常態化する。これがワークスタイルにおけるニューノーマルと言えるだろう。

大学では現状を踏まえオンライン授業やオンデマンド授業の導入が進んでいる[4]。筆者が非常勤講師をしている大学でも同様である。具体的には今回改めて情報インフラをG-Suiteに切り替え、Google ClassroomとGoogle Meetを使って授業を行う。

オンライン授業はGoogle Meetで行う。コロナが収束して通常通りの対面講義が可能になったとしても、資料の配布やテストなど授業の運営にはClassroomを継続的に利用する。つまり「ニューノーマル化」だ。

何故テレワーク実施率が低いのか。していない人に理由を聞いてみると、要は「できない」ということである。

「できない理由」は概ね次のようなものがある。

  1. FAXでのやりとりが多い
  2. ハンコ承認が行えない
  3. 顧客対応が多い
  4. 個人情報など機密情報が持ち出せない
  5. 人事政策上うまくいかない

「できない」という言葉の裏には、「やりたくない」という気持ちが見え隠れする。

1や2は業務改革を行うしかない。政府も電子承認を奨励しているようである。3もこの際は諦めるべきである。飲食店などが営業自粛している中で会社も顧客対応は自粛し減らすのはやむを得ない。問題は4と5である。

4の個人情報の保管管理にはクラウドを利用する。最近のデータセンターはサーバーの管理に二重三重の冗長性をもたせておりセキュリティ対策も進んでいる。人件費も含めた投資対効果を考えてもクラウドを活用した方がむしろリーズナブルである。

5は、日本の人事評価の問題をはらんである。日本の人事評価は「成果物の評価」と「プロセスの評価」の両方を行っているが、テレワークではこのプロセス評価がうまくできない。勤怠管理も同様でる。本来は、成果物のみの評価を行い、勤怠管理はビデオ会議で進捗を確認する程度で良いと思うのだが。

ただ、テレワークのマイナス面(①従来のコラボラーションができない。②ITリテラシー未熟者の生産性が落ちる、など)を補うサービスを考える必要はあろう。

できない理由を探しているだけでは、テレワークはいつまでたっても進まない。ニューノーマルの下では、テレワークありきぐらいの気持ちで、どう変容させれば良いのかを発想すべきである。今の状況は、行動変容というかたちで自らの新しい経験をデザインする必要に迫られている、とも言えるのだ。


まとめ
  1. 企業のコロナ対策はワークスタイル変容という文脈で考える
  2. 変容させたワークスタイルはニューノーマルとして定着させる
  3. できない理由を考えるよりも変容の仕方を考えるべき


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参考情報
[1] テレワークの実施率は、パーソル総合研究所(東京・千代田)の調査では実施率は4月17日現在で約28%である。「緊急事態宣言(7都府県)後のテレワークの実態について、全国2.5万人規模の調査結果を発表」 https://rc.persol-group.co.jp/news/202004170001.html
[2] BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)は災害時の対応として企業に求められている。
[3] 「コロナ後のニュー・ノーマルへの備えを」 https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20200422_021488.html
[4] オンライン授業とは、ビデオ会議アプリなどを使いリアルタイムで行う授業。オンデマンド授業とは、授業の資料配布、課題付与と実施結果の提出、テストの実施と採点などをインターネット経由で行うことである。