ノスタルジックなコンサルティング
Published by 松原幸行,
以前コラムで、シンギュラリティー後に生まれる職業ということで「ノスタルジスト」について書いた[1]。
ノスタルジストとは一言で表現すると、ノスタルジックな夢想を与える(サービス提供する、コンサルする)専門家だ。現代で言えば小説家などが該当する。違うのは、主体がどこにあるか。つまりユーザーの願望にそったストーリーを組み立てる部分だ。
某コラムでは、2030年頃の仕事として紹介されている[2]。ここでは一例として、裕福な高齢者向けにインテリアのコンサルティングをすることが述べられている。ただ、ノスタルジックなインテリアを装飾的に再現すればいいというものではない。オーナーの好みに応じてミックスしたりアレンジしたりする。そこが単なるノスタルジック・デザインではないところである。
某コラムにおけるノスタルジストの定義は、<セラピスト、インテリアデザイナー、歴史研究者の役割を兼ね備えている>であるが、インテリアデザインだけが対象ではないので、<セラピスト、デザイナー、歴史研究者の役割を兼ね備えている>、とするのが妥当だろう。
極論すれば、自動デザインの登場[3]で職を失うデザイナー達の新たなフィールドとして存在する可能性がある。今日もデザイン組織に心理学を専攻した人材も入っているから、歴史研究などを取り入れれば、あながち的外れとは言えないだろう。
SF映画の中に頻繁に古風なデザインが登場するのをみても分かる。AIが何でも合理的に解決してくれる世の中で、理屈に合わない、不合理なアプローチは人に委ねられる。大袈裟なスキューモーフィズムや[4]、アール・デコ風、江戸・昭和風などなど、過去のトレンドデザインをユーザーの求めに応じてデザインしたり、3Dプリンタで再現したりするのだ。
何もモノだけではない、SF映画の『トータルリコール』に登場するような、仮想体験としてノスタルジックな映像や仮想体験を提供したりする。「昔は良かった」という声が聞こえてきそうである。
ところで、スキューモーフィズムは2020年に再ブーム化するとの記事がある[5]。ここでは「ニューモーフィズム」という言葉も出ている。ニューモーフィズムとは、影のあるフラットデザインのようなものである[6]。これについては別途コラムを書こうと思う。
Diliff - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1544829による
参考情報
[1] コラム『ノスタルジスト』 - https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/nosutaruzisuto
[2] あなたの知らない、2030年のシゴト ~「文化とレクリエーション分野」編~ -
[3] 商品企画やGマーク商品の情報や各種ガイドライン、スタイルガイドなどの情報を基にAIコンピュータがデザイン案を自動生成するもの。クリークアンドリバー社のコラム『ユーザエクスペリエンスの現在地 第2回 AIでどう変わる?〜自動車運転に於けるUX〜』を参照のこと。 - https://www.creativevillage.ne.jp/70550
[4] スキューモーフィズムとは、AppleがiOSの最初の頃に提唱していた「質感や特徴など現実世界のモチーフを模倣したデザインのこと。紙のカレンダーを模したカレンダーアプリなど。
[5] 2020年に再ブーム?!スキューモーフィズムをCSSで取り入れよう - https://b-risk.jp/blog/2020/01/skeuomorphism/#link02
[6] ニューモーフィズムとは?デザイン方法やルールのまとめ - https://webdesign-trends.net/entry/11155