HSPと感性
Published by 松原幸行,
HSPという気質がある。Highly Sensitive Personの略で、病気ではなく、生得的に繊細な心を持っており感受性が強く精神的に敏感な人のことである。今このHSPに興味を持っている。
HSP判定サイトで自己判断すると、当たっている項目もあるが、自分はHSPではないことが分かる[1]。「感性思考」ということを考えていると、HSPの人は感性思考に向いているのではとか、HSPの人の感性は面白そうだなど、精細さとか感受性などに思いをはせる。
余談だが、感性の英語訳はなかなか難しく、時々議論になる[2]。SensibilityかSensitivityあたりなのだが、どちらもしっくりしないので、Kanseiとそのまま使ってはどうかという意見もあるが、説明が難しい。結局、どちらかというとSensibilityを使うしかないという結論に至る[2]。
話が逸れたが、要は、HSPと感性は直接関係が無い。HSPは感受性のことであり、つまり感度が高いことである。一方、感性は、「気づき(Awearness)」に近いものだ。気づきとは、外界の感覚刺激の存在や変化などに気づくこと、あるいは気づいている状態のことを指すそうである[3]。感性と気づきの違いは、感性は気づいているだけでなく、気づいた上で自分の言葉でその意味を変換したり再定義したりして、伝えたり行動したりする。感性はそういうものだと思っている。
一方「知覚(Perception』」という言葉もある。知覚とは、感覚器官への物理化学刺激を通じてもたらされた情報をもとに、外界の対象の性質、形態、関係および身体内部の状態を把握するはたらきのことだそうである[4]。感覚だけではなく、認識し意味づける知恵が必要なわけだ。
ロープを見た時それがヘビに見えたと誤解したとして、まさにこの誤解することが「知覚」であり、いやそれはヘビではなくロープであると認識するのが「気づき」である。人はロープがどんなものか、ヘビがどんなものかを知っており、故に「気づく」のである。知覚は気づきを成立させるきっかけのようなもので、知覚なくしては気づくことはあり得ない。
ここで、外界の対象物を見た時の"脳内の情報処理"は次のように整理することができる。
1. 感じる(感覚)
2. 知覚する(認識する、意味づける)
3. 気づく(見抜く)
4. 感性が生まれる(意味を変換したり再定義したり伝えたり行動したりする)
HSPは、この1〜3の感度が高い人であると思う。そしてクリエーションに一番関係するのは3と4であり、クリエイターは、新しい意味づけを意図的に行える人となる。意図的に行えればそれにこしたことはないが、そうでなくても、再定義し表現できるスタイルが見つかれば、それは「コンテンツ」になると思う。ピーター・モービル(Peter Morville)氏も、UXは、①ビジネスゴールとコンテクスト、②ユーザニーズと行動、そして③コンテンツ、の3つが大事と言っており、コンテンツはこれからますます重視されてくる[5]。
UXデザインも一度、「コンテンツ」と「表現」という2つに分けて考えてみてはどうだろうか。
2019年3月 筆者撮影
参考情報
[1] HSP診断サイトは色々あるが、HSPご本人の次のサイトが良いと考える。「これに当てはまればあなたもHSP」> http://elina-okinawa.com/hsp-does/
[2] 「Kanseiという用語の使い方」> https://u-site.jp/lecture/kansei
[3] 「気づき」> https://bsd.neuroinf.jp/wiki/気づき
[4] 「知覚」> https://bsd.neuroinf.jp/wiki/知覚
[5] 「コンテンツと仕組み」> https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/kontentsutoshi-zu-mi
「UXのハニカム構造をもとにユーザーを知る」> https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/uxnohanikamugou-zao-womotoniyuzawozhi-ru