ストーリー商品

ノスタルジスト[1]が活躍するのはまだだいぶ先[2]、少なくとも筆者が存命中には登場しないであろう。だが「経験ストーリー」をひもとくUXデザインの立場からその役割や能力を考えてみるのも面白い。

特に、10年後の2030年頃を想定してUXデザインの役割の変化を考える機会を提供してみる。まずUXデザインの本質に立ち戻り起点を明らかにする[3]。

UXデザインの本質は、人の経験を問題にしてその経験がより良いものであるように(その自覚してもらえるように)ストーリーを組み立てデザインすることである。

勿論、ストーリーを作ったりデザインしたりする上ではスコープ(注:プロジェクトを計画し投資を行う範囲のこと)は明確に決めなくてはいけない。

「人」の部分はビジネスであれば「顧客(CX:Customnr eXperience)」であるが、社会的なシステムの場合は「利用者」でおろうか。病院はPX(Patient eXperience)、学校はSX(Student eXperience)である。

あるスコープに沿ってどういう経験を考え、機能を組み立てるのかが肝心であるが「ストーリーを作る」と考えると取り組みやすい。

ストーリーというとストーリーテリングとかコンテンツ・マーケティングとかマーチャンダイジングなどが連想される。だがこれらはマーケティングの手法として登場したもので、ユーザーが経験するストーリー(経験ストーリー)とはちょっと違う。

経験ストーリーはいわばビデオのストーリーポードを書くようなイメージである。

つまり、状況があってキャストがいて物語がある。そのキャストの一人が対象となる顧客/利用者である。

あるいは、開発の裏話や開発秘話をストーリー化して商品開発する。そのためには今までと違う開発プロセス/システムが必要だ。今までと同じやり方であればストーリー化しても面白くない[4]。

例えばスーパーでも、今まで仲買から仕入れていた食材を産地からダイレクト調達するなど、アンテナショップ的な店も出始めている。

システムを変えるとおのずとストーリーも変わる。売り方も変わるであろう。そういうものを「ストーリー商品」と呼ぶ。
今注目されたり売れたりしているのはストーリー商品なのだ。

Fir0002, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=447518による


関連情報
[1] コラム『ノスタルジックなコンサルティング』を参照のこと - https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/nosutaruzitukunakonsaruteingu
[2] シンギュラリティ(注:AI/人工知能の性能が人類の知能を上回る技術的特異点)とされる2045年以降と想定される。
[3] コラム『ストーリーで始まるUXデザイン』を参照のこと - https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/sutorideshi-maruuxdezain

[4] 『「ストーリー性のある商品開発」のストーリを考えてみた 』- https://kaishadebenkyou.site/2018/09/30/marketing6/