“お金をかけずに”サービスを改善する
Published by 松原幸行,
お金をかけないという意味では「手作りで行う改善」というアプローチがある。「サービスのDIY」と言っても良い。
先に事例をいくつかご紹介する。
- ルーレットになる「象のゴンドラ」[1]
- 爆速メリーゴーランド[1]
- テレワーク向きの「瞑想観覧車」[1]
- お昼寝できるプラネタリウム「お昼寝タリウム」(神奈川工科大)[2]
- 消毒薬の代用品となる高濃度のお酒[3]
- マスクを広告スペースにする[4]
- マスクで自己紹介する[5]
これらは既存の機器や設備やサービスにちょっとDIY的に手を加えて視点を変える方法である。スマートとは言えないが、コストに限りがある場合などに有効である。
展開するポイントは、<この経験をどれだけ新鮮にリプレイスやアドオンできるか>、である。つまり、
サービス改善は、リプレイスとアドオンで考える
リプレイスには、例えば、人からコンピュータへのリプレイス。コンピュータから人へのリプレイスがある。コンビニエンスストアの複合機のようなモーダルなUI端末から、AIによる自律応答型端末へのリプレイスなどが良い例である。
これはIT的にはかなり高度なアプローチだが、リプレイスの典型として理解していただきたい。
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リプレイスで重要なことは「どれだけ経験が魅力的になるか」であるのだ。リプレイスしたら難しくなった、などというのは論外である。
アドオンで重要なことは「シームレスな連携」である。
利用者の経験中心に考え(HXCD)前後の他の経験をシームレスにつなぐためには、良いサービスプラットフォームを使わないといけない。プラットフォームがオープンソースで作られている「オープン・プラットフォーム」であれば、その上で構築されるサービスは基本的にシームレスで連携可能である。例えばAndroid OSだ。
Appleは自社のMac OSでなんとかやっているが、オープンネス(オープンであること)が今一である。その点Androidは、開発ソースを公開していて、サードパーティーが参入しやすい。デファクトになったサービスを親として、子や孫にあたるサービスがどんどんできる。Evernoteなどが良い例である。iPhoneとAndroidのスマートフォンを両方使ってみると、Andriodの方が拡張性と操作性をうまくバランスしていることが分かる。
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なお、一般にサービス改善は水平と垂直で責めると良いとされる。
水平とはエクスペリエンスマップのタッチポイントを強化して経験価値を高めることである。マップを水平方向に展開するのだ。
「手作りの水平展開」の例としては、「トラベリング・サプライズ」という手法がある[6]。例えばスターバックスでは、お店で客を待つだけでなく、ターミナル駅に出張してお試しコーヒーを配る、というサービスを行っている。サービスの質を変えると言う意味では大変効果的だ。
垂直というのはサービスの信頼性を高めたり担保したりするメニューである。ブループリントやビジネスモデルキャンバスとして作り込む内容である。
垂直改善の例としては、サービス価値を「クレドカード」化したり[7]、スターバックスの『グリーンエプロンブック[8]』のようにシンプルにマニュアル化し、共有していつでも見られるようにする。そうすることで接客の質を高めることができる。
改善するプロジェクトを立ち上げるのであれば、水平と垂直の2つをチーム化し競わせるのはどうであろうか。改善も戦略的に行うべきである。
Koalabray - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=77473834による
参考情報
[6] トラベリング・サプライズ(Traveling Surprise)コラム『サプライズとディライト』を参照のこと。
[7] コラム『クレドをUXに利用する』を参照のこと。
[8] スターバックスが何を大切にしているかを示した冊子で全従業員に配られる。