コンテンツとUX
Published by 松原幸行,
本コラムは「コンテンツ」について書いた過去コラム[1]の"続編およびまとめ"である。
我師匠である吉田民人氏も言っているように、サービスが目指すものは、ユーザーの期待にかなった意味を価値機能として実現し提供することである[2]。平たく言えば、①ユーザーが暗に期待するものに気づき、それを実現すべく、②適切なコンテンツと利用方法を設計し、③タイムリーに提供する、ことである。つまり、次のどれが欠けても価値あるものとは言えなくなる。
<価値あるサービス>
1. 適切なコンテンツである。
2. 適切な利用方法が用意されている。
3. 適切なタイミングで提供される。
ここで言う「コンテンツ」とは、内容だけを指すのではなく、それをアピールする計画やメディアミックスや情報管理なども含まれる。
また、インフィメーションアーキテクトのピーター・モービル(Peter Morville)氏は、UXは、①ビジネスゴールとコンテクスト、②ユーザニーズと行動、そして③コンテンツ、の3つで考えなければならないと言っている[3]。「コンテンツ」が重要であることは明らかである。では、「コンテンツ」とは何か。これは次の4点に他ならない。
<コンテンツ(contents)とは>
- 内容/情報の中身
- アピースする方法
- メディアミックス計画
- 情報管理
マーケティングでは最近、「コンテンツ・マーケティング」という言葉が使われている。適切で価値ある一貫したコンテンツを作り、それを伝達することにフォーカスした、戦略的なマーケティングの考え方のことだ[4]。サービスコンテンツを作る側、言い換えれば、UXピープル(UXデザイナーやサービス設計者、情報アーキテクト)もこの点を良く理解し、「コンテンツのデザイン」を行わなければならない。
コンテンツは、前述のコンテンツ定義の下では、次のようなデザイン作業が含まれる。
<コンテンツデザインの作業>
- 情報の中身を作る。
- メディアミックスを検討し、各メディアを通じたアピール方法を設計する。
- コンテンツ情報の利用方法、更新および保管の管理方法を組み立てる。
作業1の「情報の中身」がまさに重要な部分であって、ここで過不足があってはいけない。過剰でも不足してもダメで、ドンピシャでなければいけないのだ。かりに過剰や不足があった場合は利用状況のフィードバックから削除および追加を適宜行うが、次の2つがブレていると、過不足をリカバリーする削除や追加の検討が収束しない。
- 誰を想定したコンテンツであったか
- その人はどんなコンテンツを必要としているか
作業の2と3へ対応するものとして、「One to Oneマーケティング」や「インバウンドマーケティング」や「コンテンツマーケティング」があると言って良い[5]。2はマーケティング部門の主管だが丸投げで良いわけではない。3は情報管理部門の新たな役割となるであろう。
では、肝心の「情報の中身」はどのように作れば良いのか。一つには、「ネタ」と「型」というフレームを活用するのが良いと思う[6]。それもネタを出す前に型を決めておき、その方にかなったネタを探す。ここでいう「型」とは、「ハウツー」とか「レビュー」とか「ケーススタディ」とか「ニュース」のような「物(媒体)」で表現されるところのものだ。
SEO(Search Engine Optimization)も重要となる。テキスト文には、使用数の多い検索語を組み合わせると良い。また、共感を得るという観点からは、コンテンツを質的に方向づける「感性」の問題が大きい。いかに興味を引くか、読み続けたいと思うかである。UXライティングは難しい。
2019年3月 筆者撮影
参考情報
[1] 「コンテンツと仕組み」> https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/kontentsutoshi-zu-mi、および「UXのハニカム構造をもとにユーザーを知る」、「サービスモデルは3レイヤー」、「ピンポイント広告」など。
[2]「サービスモデルは3レイヤー」> https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/sabisumoderuha3reiya。
[3] 「UXのハニカム構造をもとにユーザーを知る」> https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/uxnohanikamugou-zao-womotoniyuzawozhi-ru
[4] 「コンテンツマーケティングとは何か?」> https://contentmarketinglab.jp/content-marketing/what.html
[5] 「ピンポイント広告」> https://hideyuki-matsubara.postach.io/post/pinpointoguang-gao
[6] 「コンテンツの「ネタを出す仕組み」と「型」を先に押さえておく」> https://www.roundup-consulting.jp/content-101/goal/make-cycle/